「さーて、そろそろ本題に入らなきゃ!」
手芸部部室に着いて早々、私は黒板に板書を始める。
男子3人には適当な椅子に座ってもらった。
「あのいけすかない白河に一泡吹かせる方法か?」
「美羽さんの手首に触れるなんて、許し難い蛮行ですからね」
「はいはーい! とりま、いろいろと剥ぐ?」
「剥ぐ!?」
逸れて行く話題にはスルー一択だったけれど、計兎くんの発言の物騒さに驚いて板書を止めてしまった。
計兎くんは特に気にした様子もなく軽く頷く。
「だって、ウサギのご先祖さまは自慢話にしくじって、ワニにベリベリーってやられたんだよ?」
計兎くんが教えてくれた神話、因幡の白兎。
ウサギとワニ、仲間の数はどちらが多いか?
なんてワニにふっかけたウサギは、数をアピールするために並んだワニの上をぴょんぴょん飛び跳ねて橋代わりにした。
利用されたことに怒ったワニに懲らしめられたらしいけど……
剥ぐって、ちょっと、ねえ……
神話って残酷。
「いったん白河会長のことは忘れて。お願いだから」
「……はーい」
ちょっと間はあったけど、素直な返事。
やっぱり計兎くんは根は真面目だ。
「なあ、美羽はああいうキラキラした優男のほうがタイプか?」
「私の話聞いてる?」
相変わらずマイペースな真神にチョークを折りかけたけど、鹿弥さんがとりなしてくれた。
「まずは美羽さんのお悩みからですよ、真神。それが解決してから恋敵の始末について考えればいい」
「こ、恋敵!?」
とんでもない単語を聞いて指に変な力が入る。
結局チョークは折れた。
「こ、恋って……白河会長は別に私の事なんてそういう対象とは思ってないでしょ。だって引く手あまた。行く先々で女の子がキャーキャー群れを成すのよ。優しいから弱小手芸部のことまで心配してくれただけで……」
うっわあ、だめだ。
喋りながら書いてるから文字がヘロヘロになってる。
だって、ありえないもの。
文武両道眉目秀麗な白河会長が……私、に。なんて。そんな。
そこで手首に目を落とす。
じゃあ、このバングルは何なんだろ?
ちょっと期待しちゃう自分もいる。
うう、ままならないマイハート。
そんなこんなでなんとか板書し終えたものを改めて見る。
うん、動揺が文字によく出ていた。
「と、とにかく。手芸部に入ってもらったからには、文化祭で一発逆転を狙わないといけないの。みんながあっと驚くような、話題にしたくなるような、バズって通知が止まらなくなるような、そんな作品でお客さんを呼び込むのよ!」
「は、ハードル高〜い」
計兎くんの感想に深ーく同意する。
なんであの時、大橋先生にあんなこと言っちゃったかなあ、私ー!
頭を抱えたくなる気持ちを押さえて意見を募る。
すると、椅子に足を組んでふんぞり返った真神が傲然と顔を上げた。
「簡単だ。要は何らかの数字で成果を出せばいい」
「そう……だけど……何かあるの?」
「今までに美羽が作ったものをすべて売り場に並べろ。俺が全部言い値で買い取る。それで終わりだ」
「……却下」
ドヤ顔して言うことがそれか。
「なんだ、美羽の魂がこもったものをおいそれと他人にやれるか。それなら俺が全部蔵にしまう」
「ああ、お金のことならご心配なく。ミサキガミ時代の貯蓄があるのですよ」
「そーそー。仕えてたのが神様なだけあって、結構ホワイトな環境だったからねー」
「そ、そういうものなの?」
ミサキガミにブラック企業とかホワイトとかあるのか。
よくお稲荷さんのキツネはお揚げさんがご褒美って聞いたけど、あれってお給料の現物支給ってこと?
はっ、そういう問題じゃない!
手芸部部室に着いて早々、私は黒板に板書を始める。
男子3人には適当な椅子に座ってもらった。
「あのいけすかない白河に一泡吹かせる方法か?」
「美羽さんの手首に触れるなんて、許し難い蛮行ですからね」
「はいはーい! とりま、いろいろと剥ぐ?」
「剥ぐ!?」
逸れて行く話題にはスルー一択だったけれど、計兎くんの発言の物騒さに驚いて板書を止めてしまった。
計兎くんは特に気にした様子もなく軽く頷く。
「だって、ウサギのご先祖さまは自慢話にしくじって、ワニにベリベリーってやられたんだよ?」
計兎くんが教えてくれた神話、因幡の白兎。
ウサギとワニ、仲間の数はどちらが多いか?
なんてワニにふっかけたウサギは、数をアピールするために並んだワニの上をぴょんぴょん飛び跳ねて橋代わりにした。
利用されたことに怒ったワニに懲らしめられたらしいけど……
剥ぐって、ちょっと、ねえ……
神話って残酷。
「いったん白河会長のことは忘れて。お願いだから」
「……はーい」
ちょっと間はあったけど、素直な返事。
やっぱり計兎くんは根は真面目だ。
「なあ、美羽はああいうキラキラした優男のほうがタイプか?」
「私の話聞いてる?」
相変わらずマイペースな真神にチョークを折りかけたけど、鹿弥さんがとりなしてくれた。
「まずは美羽さんのお悩みからですよ、真神。それが解決してから恋敵の始末について考えればいい」
「こ、恋敵!?」
とんでもない単語を聞いて指に変な力が入る。
結局チョークは折れた。
「こ、恋って……白河会長は別に私の事なんてそういう対象とは思ってないでしょ。だって引く手あまた。行く先々で女の子がキャーキャー群れを成すのよ。優しいから弱小手芸部のことまで心配してくれただけで……」
うっわあ、だめだ。
喋りながら書いてるから文字がヘロヘロになってる。
だって、ありえないもの。
文武両道眉目秀麗な白河会長が……私、に。なんて。そんな。
そこで手首に目を落とす。
じゃあ、このバングルは何なんだろ?
ちょっと期待しちゃう自分もいる。
うう、ままならないマイハート。
そんなこんなでなんとか板書し終えたものを改めて見る。
うん、動揺が文字によく出ていた。
「と、とにかく。手芸部に入ってもらったからには、文化祭で一発逆転を狙わないといけないの。みんながあっと驚くような、話題にしたくなるような、バズって通知が止まらなくなるような、そんな作品でお客さんを呼び込むのよ!」
「は、ハードル高〜い」
計兎くんの感想に深ーく同意する。
なんであの時、大橋先生にあんなこと言っちゃったかなあ、私ー!
頭を抱えたくなる気持ちを押さえて意見を募る。
すると、椅子に足を組んでふんぞり返った真神が傲然と顔を上げた。
「簡単だ。要は何らかの数字で成果を出せばいい」
「そう……だけど……何かあるの?」
「今までに美羽が作ったものをすべて売り場に並べろ。俺が全部言い値で買い取る。それで終わりだ」
「……却下」
ドヤ顔して言うことがそれか。
「なんだ、美羽の魂がこもったものをおいそれと他人にやれるか。それなら俺が全部蔵にしまう」
「ああ、お金のことならご心配なく。ミサキガミ時代の貯蓄があるのですよ」
「そーそー。仕えてたのが神様なだけあって、結構ホワイトな環境だったからねー」
「そ、そういうものなの?」
ミサキガミにブラック企業とかホワイトとかあるのか。
よくお稲荷さんのキツネはお揚げさんがご褒美って聞いたけど、あれってお給料の現物支給ってこと?
はっ、そういう問題じゃない!


