あはは、と苦笑いして顔の前で手のひらをひらひらさせると、白河会長はその手首に目をとめた。
「……きみのそれも、彼らとお揃いなのかな?」
「え」
左手のミサンガを見る。
これには真神たちのような力は込められていない、ただのアクセサリーだ。
彼らにプレゼントした時になんとなくノリで自分のも作ったけれど、こうしてみると手芸部でおそろいのようでもある。
「東雲さん。またいずれ、きみの助けになる日が来るように……」
白河会長は、自分の手首からレザーのバングルを外す。
袖口に隠れていて気づかなかった。
王子様みたいな見た目なのに黒のバングルなんて、ちょっと意外。
そんなふうにバングルに気を取られていた私の手首を、白河会長の指が撫でる。
「あ、あの」
「細い手首だ」
手首の内側、柔らかい皮膚にバングルの開口部が当たる。
そのまま、ぐっ、と押し込まれて痛みが走った。
「い、っ!」
瞬く間に痛みより驚きのほうが勝った。
あっという間に私の手首には、ミサンガを覆い隠すように黒のバングルが巻かれていた。
「はは、ぶかぶかだ。すぐに落ちてしまうね。少し待ってて。調節しよう」
「あ、あのっ、白河会長! これ……!」
白河会長の私物を借りる(それとももらう?)なんて恐れ多くて慌てて外そうとするけれど、白河会長は楽しそうに笑いながらレザーの結び目をきゅっと締めた。
すっかり私のサイズに調節されたレザーのバングルを見て、白河会長は満足そうに目を細めた。
「どうやら東雲さんは大変なものに憑かれてしまったみたいだからね。だからこれはそう……魔除け、かな」
魔除け。
さらりとそう言ってのけた白河会長の瞳は、いつもの王子様スマイルの輝きを放ってはいない。
どう聞いても宣戦布告。
どう見ても一触即発。
「あいにく、美羽ちゃんにはボクたちっていう護衛が着いてるから心配ご無用だよ、生徒会長サマ」
「そうそう。花に寄ってくる虫を祓うのも、俺たちの務めです」
私の頭の上でぽんぽんと交わされる丁丁発止のやりとりに、たらりと冷や汗をかく。
計兎くんも鹿弥さんも意外と喧嘩っ早いのね!
そういうのよくない!
「美羽」
彼らをどうとりなせば良いかパニックになっていたところに、急に真神が後ろから声をかけてきた。
同時に膝の裏を掬われて視界がぶわりと浮き上がる。
「ひゃあ!」
「そんなのに関わってる時間が惜しい。行くぞ」
真神の声が凄く近くに聞こえる。
頭の上から降ってくるような感覚。
そして、膝の裏に回された腕は逞しい。
え、あ、これってもしかして、お姫様抱っこ!?
「ま、真神、部室なら歩いて行けるってば」
真神の胸板をとんとんと叩いても、悲しいかな下ろしてくれる様子はない。
「さっさと行こう。部室は原則、部員以外立ち入り禁止だ。 なら邪魔が入らず美羽を可愛がってやれるからな」
か、か。可愛がる!? なにそれ!
なんか響きがいかがわしいんですけど!
せんせー! 真神くんが不純異性交友をほのめかしているのですが!!
私はその時、そんなおバカな考えで頭がいっぱいだったから気づかなかったのだけれど……
真神と白河会長の睨み合いで、窓ガラスが1枚、ぴしりと音を立てたとかなんとか。
……視線って、物理的破壊力あったっけ?
「……きみのそれも、彼らとお揃いなのかな?」
「え」
左手のミサンガを見る。
これには真神たちのような力は込められていない、ただのアクセサリーだ。
彼らにプレゼントした時になんとなくノリで自分のも作ったけれど、こうしてみると手芸部でおそろいのようでもある。
「東雲さん。またいずれ、きみの助けになる日が来るように……」
白河会長は、自分の手首からレザーのバングルを外す。
袖口に隠れていて気づかなかった。
王子様みたいな見た目なのに黒のバングルなんて、ちょっと意外。
そんなふうにバングルに気を取られていた私の手首を、白河会長の指が撫でる。
「あ、あの」
「細い手首だ」
手首の内側、柔らかい皮膚にバングルの開口部が当たる。
そのまま、ぐっ、と押し込まれて痛みが走った。
「い、っ!」
瞬く間に痛みより驚きのほうが勝った。
あっという間に私の手首には、ミサンガを覆い隠すように黒のバングルが巻かれていた。
「はは、ぶかぶかだ。すぐに落ちてしまうね。少し待ってて。調節しよう」
「あ、あのっ、白河会長! これ……!」
白河会長の私物を借りる(それとももらう?)なんて恐れ多くて慌てて外そうとするけれど、白河会長は楽しそうに笑いながらレザーの結び目をきゅっと締めた。
すっかり私のサイズに調節されたレザーのバングルを見て、白河会長は満足そうに目を細めた。
「どうやら東雲さんは大変なものに憑かれてしまったみたいだからね。だからこれはそう……魔除け、かな」
魔除け。
さらりとそう言ってのけた白河会長の瞳は、いつもの王子様スマイルの輝きを放ってはいない。
どう聞いても宣戦布告。
どう見ても一触即発。
「あいにく、美羽ちゃんにはボクたちっていう護衛が着いてるから心配ご無用だよ、生徒会長サマ」
「そうそう。花に寄ってくる虫を祓うのも、俺たちの務めです」
私の頭の上でぽんぽんと交わされる丁丁発止のやりとりに、たらりと冷や汗をかく。
計兎くんも鹿弥さんも意外と喧嘩っ早いのね!
そういうのよくない!
「美羽」
彼らをどうとりなせば良いかパニックになっていたところに、急に真神が後ろから声をかけてきた。
同時に膝の裏を掬われて視界がぶわりと浮き上がる。
「ひゃあ!」
「そんなのに関わってる時間が惜しい。行くぞ」
真神の声が凄く近くに聞こえる。
頭の上から降ってくるような感覚。
そして、膝の裏に回された腕は逞しい。
え、あ、これってもしかして、お姫様抱っこ!?
「ま、真神、部室なら歩いて行けるってば」
真神の胸板をとんとんと叩いても、悲しいかな下ろしてくれる様子はない。
「さっさと行こう。部室は原則、部員以外立ち入り禁止だ。 なら邪魔が入らず美羽を可愛がってやれるからな」
か、か。可愛がる!? なにそれ!
なんか響きがいかがわしいんですけど!
せんせー! 真神くんが不純異性交友をほのめかしているのですが!!
私はその時、そんなおバカな考えで頭がいっぱいだったから気づかなかったのだけれど……
真神と白河会長の睨み合いで、窓ガラスが1枚、ぴしりと音を立てたとかなんとか。
……視線って、物理的破壊力あったっけ?


