廃部寸前な手芸部ですが、ユーレイ部員が助けてくれるようです!?

「もう! 普通に入部届けを出すだけなのに、なんでこんなにヒヤヒヤしなきゃいけないのっ」
 
「すみません。あのひとが美羽さんを困らせて追い詰めていたんだなと思ったら、つい」
 
 すみませんと言う割に、ちっとも反省していなそうな笑顔でけろりと返した鹿弥さんにはああとため息をつく。
 鹿弥さんったら爽やかな笑顔の奥は、結構な毒舌家だ。
 
「まあいいだろう。教師と口喧嘩できるくらいにはこの学校の生徒だと認識させられたんだ」
 
「そうそうー! あの場に学年主任や教頭まで居たのはラッキーだったなあ。一気に術が仕掛けられて時短時短っ」
 
 はしゃぐ計兎くんは手首のミサンガをかざしてご満悦だ。
 
 そう。3人が着けているミサンガには、特別な術が込められている。
 人ではない彼らの存在を、周囲に溶け込ませる効果があるのだ。
 ミサンガにしたのは特に意味はなくて、あの時私が持っていたからお揃いが欲しいと言われて、急いで作ってプレゼントしただけなんだけれど、ね。
 
 そして、先程彼らが名乗った人間としての名前。
 あれも私からのプレゼントだ。
 
 真神には、真神志狼。
 狼の文字を入れつつ、銀の毛並みを「シロ」で表したのは、ちょっと凝ってるかなと思う。
 
 鹿弥さんには、春日鹿弥。
 鹿は奈良の春日大社で大切にされている動物なんだって。
 
 計兎くんには、桂計兎。
 ウサギといえば月。月には桂という伝説の木が生えているそうなので、それにあやかってみた。
 
 3人とも、結構喜んでくれた……と思う。
 
「それにしても鹿弥さんたら……大風呂敷広げたのはいいけど、アテはあるんですか」
 
 あんなにもあからさまに、手芸部顧問なんてお荷物だという態度を隠さない大橋先生に対して、大手を振って手芸部顧問と吹聴してもいいだなんて。
 
「おや? そもそも最初にあの条件を打ち上げたのは美羽さんでしょう。俺は少しだけ花を添えただけですよ」
 
 にっこりと、非の打ち所のない笑顔で、鹿弥さんははっきりと思い出させてくれた。
 
 
 ……すべては、私の大言壮語から始まっているということを。
 
 
 責任の所在は明確に。
 言い出したことには責任を持ちましょう。
 因果は巡る糸車。
 
 
 うーん。今の自分を適格に表す言い回しはこんなにもすらすら出てくるというのに、手芸部を一躍人気にするためのアイディアはさっぱり浮かばない。
 
「ひとまず、部室で作戦会議といこうか……」
 
「あれ? 東雲さんだ。こんなところでどうしたんだい」
 
 名前を呼ばれてはっと振り向く。
 
 白河生徒会長が、ひらりと手を振っていた。