廃部寸前な手芸部ですが、ユーレイ部員が助けてくれるようです!?

「ねえねえ美羽ちゃん。お・待・た・せ。ボクともちゅーしよ?」
 
「ち、ちゅー!?」
 
 ちょっと待ってよ。目的が変わってる。
 彼らがユーレイから実体になるためにキスが効果あるって話であって、別に私がキス待ちしてたわけではない。
 
 断じてないっ!
 
「だってこのままじゃ、ボクだけユーレイのまんまだよ? そんなの悲しい。ボクだって美羽ちゃんの役に立ちたい。だからキスしよ?」
 
「だ、だからの使い方が間違っているような……」
 
「んん? そーう? ボク、理数系ウサギだから文系は苦手なのかも。そんな哀れなウサギに愛の手ならぬ愛のくちびるを捧げてほしいなー? なーんてっ」
 
 きゃはっ☆とテンション高くまくし立てられ、クラスの一軍女子だってこんなに可愛くキメられないだろう笑顔で、計兎くんは私の首に腕を回した。
 
「わっ」
 
「おい計兎。唇は」
 
「うっるさいなあ。ヤキモチ狼は引っ込んでーてっ」
 
 真神をじろりと睨んだ計兎くんは、私に改めて視線を合わせる。
 小悪魔感たっぷりな妖艶な微笑み。

 
 計兎くんってもしかして年上キラーなの!?
 私は年上じゃないよ!? ただの中学生!!
 
 
「……ね? 美羽ちゃん。最高の思い出にしよーね……」
 
 ぷっくりとした唇が寄せられる。
 
 ひええ、これは……

 
 ぷちゅっ

 
「……」
 
 …………?

 唇は触れた。
 けど。
 その、感触は唇にでは無くて……
 そっと私はそこに触れる。
 
「ほっぺ?」
 
「お前は、そこで、充分だっ」
 
「真神!」
 
 真神が寸前で計兎くんの頭を掴んで軌道修正していた。
 
 少しずれたおかげで唇は無事。
 た、助かったあ……
 
「えええ〜、真神のケチ。意地悪。パワハラモラハラミサハラ」
 
「最後のミサハラってなに?」
 
「ミサキガミハラスメント……」
 
 相変わらずの絶口調で文句をまくし立ててきた計兎くんだけど、自分もユーレイじゃなくなったことに気がつくとすぐにはしゃぎ出した。
 切り替えが早い!
 
「うわ、わわわっ、これすごーいねっ! 美羽ちゃん、ホントに人間?」
 
「そ、そこから疑う!? 私はユーレイじゃないからねっ!」
 
「そうじゃなくて、こんなにすごい加護をぽこすか授けてくれるなんて、最早人間超えて神」
 
 ぼこすか……?
 
「あー、美羽が神様だったらボクたちホントに美羽のミサキガミになっちゃうのに」
 
「いやいや、私は人間ですからね」
 
 釘を刺しておかないと、とんでもない存在にされてしまいそうだ。
 
 でもまあ……
 
 じっと3人を見る。
 実体を得ても服装は変わらず制服のままだ。
 
 どこからどう見ても、同級生。
 いや、こんなイケメン、クラスにいませんけれど。
 
「……いけるのかもしれない」
 
 手芸部、部員3名様、入りました……!!