「よし。これで明日、顧問に入部届けを出せば――」
 
「待って!」
 
 ばっと両手を挙げて制する。
 3人はきょとんと私を見つめた。
 
「どうしたの?」
 
「何か、問題でも?」
 
 わかってない。彼らはわかってなさすぎる。
 おほん、と芝居がかった仕草で咳払いをした。
 
「確かに、その制服はなんとかなるでしょうけど……でも! どうにもならないことがあります」
 
「え、なになに」

 
「あなたたちの、その……透け感です!」
 
 
 びしっと目の前の計兎くんを指さす。
 
 他人を指さすのは行儀が悪いと知っているけど、ここはやむを得ない。
 それにめいっぱいオブラートに包んだ表現をしたつもりだ。
 伝わらなければ意味がないので指摘させてもらう。
 
 彼らは3人とも……その、体が……透けている。
 体の向こう側にいるひとと、モールス信号で通信できるくらいにスッケスケだ。
 クリア素材で涼しさを演出! とか、今年の夏は軽やかにシースルー!とか、そういう次元の話ではない。

 
 だって、魂だけの存在――つまり、ユーレイなんだもの!
 
 
「あー……なるほどね?」
 
「肉体は滅びてしまいましたからね。こうして衣装を変えられるのも、魂だけの存在になっていることを逆手にとっているわけでして」
 
 あ、自覚はあったんだ、良かった……けど、良くはない!
 
 
「部員になってくれる気持ちはありがたいけど、名実ともにユーレイ部員はちょっと……」
 
 
「はは、名実ともに、か! 美羽はなかなか面白いことを言う」
 
 
 この問題をわかっているのかいないのか。
 笑い飛ばした真神をじろりとねめつけた。
 
「笑ってないで、次の手を考えないといけないの! やっぱりビラ配りとか地道にやるしかないのかなあ」
 
 はあ、とため息。
 その時、かさついた喉に妙な刺激が入って咳き込んでしまった。
 
「っけほけほっ」
 
「美羽!」
 
「大丈夫です? お水持ってきますね」
 
「っ、ごめ、だい、じょぶ」
 
 こんこんと咳き込む合間に息を吸い込んで落ち着かせようとしているけど、こういう時に限ってすぐに収まらない。
 
 苦しいー! うう、やっぱりあの時お水もらえばよかった。
 
「美羽さん、お水。飲めます?」
 
 涙目の視界で、にじんだ輪郭の鹿弥さんがコップを差し出している。
 
 すみませんと差し出した手よりも先にコップを掴んだのは――真神だった。