夜を繋いで君と行く

* * *

「……三澄さんも意外とやんちゃなの?」
「二階堂さんに引っ張られちゃってるだけなんじゃないかなぁ。」

 地平線に太陽が触れるか触れないかの夕暮れ時。海の見える砂浜に、怜花と里依は腰を下ろしていた。海に少し入りたいと言った律にやれやれと言いつつも三澄が付き合ってくれている。律と三澄のサンダルと靴は怜花たち二人の近くにあった。
 ザザン……と波の音が聞こえる。周りには誰もいなかった。海水浴シーズンは終わったもののいまだに暑いままだ。夕方になって吹く風にも潮の匂いが混ざり、涼しさよりも湿度が勝る、そんな空気が満ちていた。

「さっき取りに行ってたの、それ?」
「うん。」

 怜花は律の車の後ろに積んである長めのフェイスタオルを2枚持ってきていた。1枚を里依に渡す。

「三澄さんは足だけで大丈夫だと思うんだけど、律はどうかなぁって。」
「どうかなって?」
「転ぶとか、水かけてやり返されて律の方が濡れるとか……なんか全部ありそうで。」
「そ、そうかも?」
「でしょ?」

 里依はくすくすと笑っている。今日はダブルデートだった。律が車を出し、ちょっとしたショッピングモールで買い物をし、スイーツを食べて、たまたま目に入った海に寄りたいと運転手権限で言い出して急に停めた。降り立って三澄を連れて海にまっしぐら、というのを怜花と里依は眺めていた。

「二階堂さんってあんな感じなんだね……。」
「あんな感じ?」
「うん。その、怜花のこと大好きでいてくれてるのは知ってたけど……思っていたよりもそ、そうだな……元気っていうか。」
「子供っぽい、ではなくて?」

 図星をつかれたのか、里依は視線を彷徨わせる。そんな姿に今度は怜花が笑った。

「今日はずっとテンション高かったね。三澄さんが一緒だし、私よりもノリもいいしで付き合ってくれるから、いわゆるパブリックイメージとはかけ離れていたかも。本当はああやって色々やりたい人なんだよ。」
「そうみたいだね。あと、独占欲強くてびっくりしたよ。私と張り合うとは思ってなかった!」
「本当だよね。なんか何でもずるいずるい言ってて……ごめんね、里依。」
「ううん、全然!」
「三澄さんはそういうの一つもなくて、さすがだなぁって思ってたよ。」
「……それ、二階堂さんには言っちゃだめだからね、怜花。」
「うん。わかってるよ。だから今、里依にだけ言ってるの。」

 そう言って怜花はにこりと微笑んだ。その瞬間、少し大きめのバッチャンという水の音が聞こえた。