夜を繋いで君と行く

「怒らなかったもんね、迎えに来てくれた日も。」
「怒るわけないじゃん……。だって痩せちゃってボロボロ泣く怜花が目の前にいて、そんな風にしちゃった理由の一つに自分がいるだろうことが嫌だったけど、でももう1回会えたんだよ。それで……本当はきっとその日に話すのは酷なことなんだろうなとは思ったけど、もう逃がせないなって思ったんだ。」
「……逃がせないって今は言ってるけど、あの日の律もクッションいっぱい置いてたよ。ずっと見ててくれた、私があれ以上折れてしまわないように。先に折れちゃってごめんね。あんまり頼りにならなくて、ごめん。律にいっぱい頑張らせちゃう私でごめんなさい。」

 怜花は深く、頭を下げた。何度も謝っているし、律が謝罪を求めていないことも知っている。それでも今こうして一緒にいられるのは、やはり律がずっと頑張り続けてきたからだということも知っているから。

「だからこれからは……律の頑張りに追いつく私に、ちゃんとなるからね。」
「えぇ~これ以上何でもできる人になっちゃうの?いいよ~できなくて。」
「い、嫌だよ。だって頑張らないと律、見えなくなっちゃうもん。」
「そんなに違う場所にいるの?こんなに近くにいるのに?」
「……物理と精神は違うよ。」
「そうかなぁ。確かに最初に怜花を諦めなかったのは俺だけど、でもすぐ握り返してくれたじゃん。怜花だって俺を諦めなかったでしょ?同じじゃない?行動の種類が違うだけでさ。それに行動だけで言えば、付き合ってないのに俺が家まで送ったときにご飯のおかずのお裾分けくれたりさぁ。俺が食べたいって言ったもの作ってくれたり、俺ができるような簡単なことやらせてくれたり、結構いろんなことしてくれてたよ。むしろ怜花の方が努力値高くない?俺が先に告白したって行動を怜花が高く見積もりすぎなんだよ。おんなじだよ。ちょっとずつ手を伸ばしながら、ここからは好きな時に繋ぐし、理由なくても繋ぐよって約束を取り付けたのがあの日だったってだけ。」

 律の両手の指が怜花の指を絡め取った。指の間をきゅっと握られると、胸がとくんと静かに鳴る。

「その後だってさぁ、結構怜花がリードだったよ?クリスマスデートを仕事で潰した俺に怒らず、いてほしいって言った分だけ泊まってくれて、クリスマスと年末とずっと一緒に居て……って言えるほどじゃないかもだけど、家には居てくれて、あったかいご飯作って待っててくれたじゃん?そのあたりってさ、怜花よりもやばめに体調も崩したし星宮ゆりあのこともあった。……甘えてるなぁって、随分弱くなったなぁって思って、でも怜花は1回も嫌な顔しなかったよ。あ、ちょっと怒ってたね。具合悪いのに何で連絡しないのって、ちょっとだけ。」
「……言ったけど、でも自分も看病してなんて口が裂けても言えないなって思って、引っ込めたよ。」
「うん。甘えんのも下手だよね、俺も怜花も。俺はこれでもかなり上手くなったと思うけど。」
「……律は、本当に甘えなきゃいけないときに甘えるのが下手だよ。甘えなくていいときは甘えるのに。」
「それ、具合悪かった時のこと言ってる?それとも星宮ゆりあ?」
「どっちもだよ!」
「どっちもか~ごめんって。でもほら、怜花の頑張りポイント、結構高いでしょ?だから全然遠くじゃないよ。ってか遠くは禁止です禁止~離してあげません~。」

 ゆっくりと手が離れたと思ったら、そのままゆるく抱きしめられる。すっぽりと体の全てを包み込むような優しい体温に怜花は微笑んだ。