「そのくらいの感じだったんだ……。」
「え?」
「いやその、本当に迷惑じゃないのかなってことばっかりが心配だったから、あの頃は。」
律は少し上を向いて、『んー』と言いながら思いを巡らせていた。
「でももちろん、近付きたいってのはあったんだよ。そんないきなりぐいぐいってわけではなくて、本当にただ話したかった。でも怜花はずっとちょっと困ってるんだろうなとも思ってたよ。『どうしよう』が顔に張り付いてた。」
「えっ!?」
「それ見て、俺は色々やりすぎてるんだろうなって思ってた。でも、どこでどう引いたらいいのかわからなくて。ていうか、俺が引いたらきっともう話せないんだろうな、それは嫌だなで繋ぎとめてた感じだよ。……言葉にしたら、結構情けないね。」
怜花はブンブンと首を横に振った。そしてパッと顔を上げて律を見つめた。
「律があの夜に助けてくれなかったら、……私はまだ、独りで夜、怖くて泣いてたかもしれないよ。」
「やっぱり、怜花って独りで泣いてた?」
「……やっぱり?」
怜花の問いかけに律は静かに頷いた。そして怜花を少し不安げに見つめながら口を開いた。
「お泊まり会やったときの夜、泣いたじゃん。ずっと抱きしめて泣いてないか見ていたかったけど、あの時の俺にそれは許されてなかった。だから我慢したけど、あの日、怜花が家で一人でこうやって泣いてるのかもって初めて思ったんだよね。」
「……鋭いね、本当に。」
「だってさ、押し殺し方が無理してるんだろうなって感じがしたんだよ。でも、そこに触れていいわけじゃないんだろうなって。その前から好きというか、気になってはいたよ。でも、あの日だろうね。この子の傍に無条件で居るにはやっぱりこのままじゃダメなのかもしれない。もう、彼氏役ではいたくないのかもって思って。朝起きたらさぁ、冗談で聞いたのに頭触っていいって許可出て、ふざけて頭ぐしゃぐしゃーってやったら可愛い顔で笑うんだもんなぁ、声なんかあげちゃってさぁ。あんなの落ちないやついないって。」
「だ、だって!絶対ああ言えばやらないって、思ったん……だよ……。」
怜花の声はみるみる萎んでいく。その一方で耳は赤く染まっていく。
「少しでも近付きたくて、手を繋ぎたくて。」
律は怜花の手を取り指を絡めると、怜花の指先にそっと口づける。
「笑ってほしかった。こっちを見て、笑ってほしかったんだよね。その可愛い顔を一番近くで見たかった。泣いてるなら笑えるまでずっと近くにいたかった。……子供みたいなことをずっと、思ってたんだよ。でも俺は怜花の優しさとか頑張りに甘えてて、怜花が一人で抱え込んじゃうことをちゃんと捉えられていなくて、ものすごーく泣かせて、ものすごく独りにしちゃった。」
明るく軽快なトーンだった律の声がゆるやかに落ちていった。その声に怜花の胸が苦しくなる。
律のせいじゃなかった。怜花自身が、改めて律との立場を意識して、勝手に見切って離れていっただけなのだから。
「え?」
「いやその、本当に迷惑じゃないのかなってことばっかりが心配だったから、あの頃は。」
律は少し上を向いて、『んー』と言いながら思いを巡らせていた。
「でももちろん、近付きたいってのはあったんだよ。そんないきなりぐいぐいってわけではなくて、本当にただ話したかった。でも怜花はずっとちょっと困ってるんだろうなとも思ってたよ。『どうしよう』が顔に張り付いてた。」
「えっ!?」
「それ見て、俺は色々やりすぎてるんだろうなって思ってた。でも、どこでどう引いたらいいのかわからなくて。ていうか、俺が引いたらきっともう話せないんだろうな、それは嫌だなで繋ぎとめてた感じだよ。……言葉にしたら、結構情けないね。」
怜花はブンブンと首を横に振った。そしてパッと顔を上げて律を見つめた。
「律があの夜に助けてくれなかったら、……私はまだ、独りで夜、怖くて泣いてたかもしれないよ。」
「やっぱり、怜花って独りで泣いてた?」
「……やっぱり?」
怜花の問いかけに律は静かに頷いた。そして怜花を少し不安げに見つめながら口を開いた。
「お泊まり会やったときの夜、泣いたじゃん。ずっと抱きしめて泣いてないか見ていたかったけど、あの時の俺にそれは許されてなかった。だから我慢したけど、あの日、怜花が家で一人でこうやって泣いてるのかもって初めて思ったんだよね。」
「……鋭いね、本当に。」
「だってさ、押し殺し方が無理してるんだろうなって感じがしたんだよ。でも、そこに触れていいわけじゃないんだろうなって。その前から好きというか、気になってはいたよ。でも、あの日だろうね。この子の傍に無条件で居るにはやっぱりこのままじゃダメなのかもしれない。もう、彼氏役ではいたくないのかもって思って。朝起きたらさぁ、冗談で聞いたのに頭触っていいって許可出て、ふざけて頭ぐしゃぐしゃーってやったら可愛い顔で笑うんだもんなぁ、声なんかあげちゃってさぁ。あんなの落ちないやついないって。」
「だ、だって!絶対ああ言えばやらないって、思ったん……だよ……。」
怜花の声はみるみる萎んでいく。その一方で耳は赤く染まっていく。
「少しでも近付きたくて、手を繋ぎたくて。」
律は怜花の手を取り指を絡めると、怜花の指先にそっと口づける。
「笑ってほしかった。こっちを見て、笑ってほしかったんだよね。その可愛い顔を一番近くで見たかった。泣いてるなら笑えるまでずっと近くにいたかった。……子供みたいなことをずっと、思ってたんだよ。でも俺は怜花の優しさとか頑張りに甘えてて、怜花が一人で抱え込んじゃうことをちゃんと捉えられていなくて、ものすごーく泣かせて、ものすごく独りにしちゃった。」
明るく軽快なトーンだった律の声がゆるやかに落ちていった。その声に怜花の胸が苦しくなる。
律のせいじゃなかった。怜花自身が、改めて律との立場を意識して、勝手に見切って離れていっただけなのだから。



