「そういう意味でも笹塚さんとその奥さんは本当に一度も、俺の言葉を疑わなかったね。驚くくらい。本質的な意味で帰る場所がないことも、連絡先として機能する人がいないことも否定することなくそうか、とだけ。で、よくご馳走になってた。笹塚さんのお家で食事した時が最初の衝撃かな。普通の人は、家でこういう風に楽しく会話しながら食べるんだって知った。何かを食べること自体も目的だけどそれと同時に楽しく食べることも目的なんだって。美味しいと思う味がした。最初の頃は本当に金がない時代だったからありがたかったし、本当に美味しかった。俺は笹塚さんに生きる術のほとんどを教えてもらったのかもしれないなって今でも思うよ。笹塚さんに人間にしてもらった。……本当の父で、母だったらどれだけよかったか。怜花に会わせたい家族がいるって紹介できてたかもしれなかったね。」
怜花は首を横に振った。
「素敵なご両親がいて、自分とは違うんだ、つり合いが取れないって思ったら私はどこかで逃げ出したと思うよ。だって私は、会わせられないから。……それと、あの、私は笹塚さん、えっと奥様にも笹塚さんご本人にもお会いしてるんだよ。……ほんの少し、だけど。」
「言ってたね。星宮ゆりあの件でごたついてたからちゃんと聞けてなかったな、それ。何か言われた?」
「あ、いや……何かってほどのことは。ただ、あの日はすぐ向かってほしいってだけ。」
「どっちが言ってた?」
「奥様かな。律のこと、りっちゃんって呼ぶからびっくりしたよ。」
「そうなんだよ~なんかいつまで経っても子供扱いでさ。いやまぁ、いっぱい迷惑かけてるから当然と言えば当然なんだけど。」
少し頭を掻いた律がそうぼやく。そんな姿に怜花の口元には自然と笑みが零れた。
「すごく大切に育てた人がこういう顔をするんじゃないかなって思うくらい優しい顔で言われたものだからね、不安も本当に行って律の迷惑にならないかなっていう気持ちもあったんだけど、でも頑張りますって言えたっていうか……。」
「うん。なんかわかる。夏穂さんって俺は呼んでるんだけど、夏穂さんにはそういう背中押す力めちゃくちゃあるよね。俺の落ちたくないオーディションの時も絶対前日にかつ丼とかカツカレー作ってくれるし。」
「ゲン担ぎ系のご飯だ!そういうの食べたいとき、今もある?」
「んーそうだなぁ、今はというか前からなかったし、そもそも知らなかったんだけど、料理がこれだから嬉しいとかではなくてさ、その気持ちが有難くて嬉しかった。それは昔も今もそうかもしれない。誰かが俺のことを考えて食事を作ってくれて、一緒に食べてくれる、しかも楽しい会話つき。これはやっぱり、なんかかたまった自分の中の何かが溶けていく気がしたなぁ。」
「……そっか。」
小さく相槌を打って、怜花は律の指をきゅっと握った。
怜花は首を横に振った。
「素敵なご両親がいて、自分とは違うんだ、つり合いが取れないって思ったら私はどこかで逃げ出したと思うよ。だって私は、会わせられないから。……それと、あの、私は笹塚さん、えっと奥様にも笹塚さんご本人にもお会いしてるんだよ。……ほんの少し、だけど。」
「言ってたね。星宮ゆりあの件でごたついてたからちゃんと聞けてなかったな、それ。何か言われた?」
「あ、いや……何かってほどのことは。ただ、あの日はすぐ向かってほしいってだけ。」
「どっちが言ってた?」
「奥様かな。律のこと、りっちゃんって呼ぶからびっくりしたよ。」
「そうなんだよ~なんかいつまで経っても子供扱いでさ。いやまぁ、いっぱい迷惑かけてるから当然と言えば当然なんだけど。」
少し頭を掻いた律がそうぼやく。そんな姿に怜花の口元には自然と笑みが零れた。
「すごく大切に育てた人がこういう顔をするんじゃないかなって思うくらい優しい顔で言われたものだからね、不安も本当に行って律の迷惑にならないかなっていう気持ちもあったんだけど、でも頑張りますって言えたっていうか……。」
「うん。なんかわかる。夏穂さんって俺は呼んでるんだけど、夏穂さんにはそういう背中押す力めちゃくちゃあるよね。俺の落ちたくないオーディションの時も絶対前日にかつ丼とかカツカレー作ってくれるし。」
「ゲン担ぎ系のご飯だ!そういうの食べたいとき、今もある?」
「んーそうだなぁ、今はというか前からなかったし、そもそも知らなかったんだけど、料理がこれだから嬉しいとかではなくてさ、その気持ちが有難くて嬉しかった。それは昔も今もそうかもしれない。誰かが俺のことを考えて食事を作ってくれて、一緒に食べてくれる、しかも楽しい会話つき。これはやっぱり、なんかかたまった自分の中の何かが溶けていく気がしたなぁ。」
「……そっか。」
小さく相槌を打って、怜花は律の指をきゅっと握った。



