「映画のおかげで舞台挨拶という場に立つことになった。それで、この見てくれが良い意味で作用した。要は『この新人、見た目もまぁ使えるじゃん』ってことで、注目度が上がった。異例のロングランになって、雑誌で少し特集が組まれるようになって、少しずつ名前のある役を勝ち取れるようになった。ついでにイケメン声優とかいうどうでもいい肩書をもらうようにもなって、実際の声優の仕事とは別で雑誌の仕事とか声優集めた番組とかに起用されるようにもなって、最初のあたりは仕事がなかったから生きるためにはやるしかなくて、見てくれでも何でも、売れるものは売るみたいな覚悟でやった。で、多分『10回目のキスの仕方』で一気に女性ファンが増えた。少女漫画原作のものって割と1クールで終わることが多いけど、原作最終巻までアニメ化したのもあって、長く関わる仕事になったのも大きかったかな。」
そのタイトルには聞き覚えがあった。改めて作品を並べられると知っているものはそれなりにあるものの、本当に自分は律のことを声優として見ていなかったことに気付く。作品を追いかけるチャンスも時間もあったのに、律の出演作を全て網羅して理解しているわけではないのだ。
「……あの、ごめんね、律。」
「何が?」
「私その、律の出演作を全て知っているどころか、その……作品は知ってるのに律が何の役とか全然わかってなくて……。」
「あぁ、そんなこと?全然?むしろそういう話は全然してなかったね。観ててくれたら嬉しいけど、知らなかったからといって悲しいとかもないよ。だって怜花は最初からただの一人の人として俺を信用できるか見てたじゃん。声優で稼げてるとか顔がいいとか、そういうの全然興味なかったでしょ?」
「興味がないというか……だって顔がかっこいいから好きですってならないし、お金がたくさんあったらすごいけど、それだけじゃ為人なんて……。」
出会った段階で律が売れっ子声優として有名だったことも知っているし、いわゆるイケメン声優として括られていることも知っていた。でもだからなんだというのか、くらいの気持ちでいた。そもそも、こんなことを話す関係になる予定などなかったのだから。
「うん。怜花はずっとフェアだったよ。怜花の方から探りを入れて俺のことをもっと調べることはできた。俺よりも怜花の方が世間に出している情報は多い。誕生日だって好きな食べ物だって先行で知識を入れることはできた。でも怜花はそれをしなかった。だから俺が投げた質問を投げ返すことで同じ分だけ知識をつけることができた。それこそ、本人の口から聞いた話だけをね。俺は、俺の口から話した言葉だけを信じてくれる人が、どれだけ貴重な存在なのか今はよくわかるよ。」
怜花の頭を撫でながら、律はそっと言葉を落とした。
そのタイトルには聞き覚えがあった。改めて作品を並べられると知っているものはそれなりにあるものの、本当に自分は律のことを声優として見ていなかったことに気付く。作品を追いかけるチャンスも時間もあったのに、律の出演作を全て網羅して理解しているわけではないのだ。
「……あの、ごめんね、律。」
「何が?」
「私その、律の出演作を全て知っているどころか、その……作品は知ってるのに律が何の役とか全然わかってなくて……。」
「あぁ、そんなこと?全然?むしろそういう話は全然してなかったね。観ててくれたら嬉しいけど、知らなかったからといって悲しいとかもないよ。だって怜花は最初からただの一人の人として俺を信用できるか見てたじゃん。声優で稼げてるとか顔がいいとか、そういうの全然興味なかったでしょ?」
「興味がないというか……だって顔がかっこいいから好きですってならないし、お金がたくさんあったらすごいけど、それだけじゃ為人なんて……。」
出会った段階で律が売れっ子声優として有名だったことも知っているし、いわゆるイケメン声優として括られていることも知っていた。でもだからなんだというのか、くらいの気持ちでいた。そもそも、こんなことを話す関係になる予定などなかったのだから。
「うん。怜花はずっとフェアだったよ。怜花の方から探りを入れて俺のことをもっと調べることはできた。俺よりも怜花の方が世間に出している情報は多い。誕生日だって好きな食べ物だって先行で知識を入れることはできた。でも怜花はそれをしなかった。だから俺が投げた質問を投げ返すことで同じ分だけ知識をつけることができた。それこそ、本人の口から聞いた話だけをね。俺は、俺の口から話した言葉だけを信じてくれる人が、どれだけ貴重な存在なのか今はよくわかるよ。」
怜花の頭を撫でながら、律はそっと言葉を落とした。



