夜を繋いで君と行く

* * *

 食事を終えて、冷やしていた麦茶をグラスに注いでソファの方に向かった。怜花は唇をきゅっと結び直して律よりも先に座った。

「んー……悩むなぁ。」
「何に?」
「怜花が何でも叶えてくれるっていうならさぁ、当然俺はいちゃいちゃしたいわけだけど?でも抱きしめたら顔見れなくなるじゃん?」
「そ、うだね。」
「顔見えないと、怜花って泣くのも上手いから隠せちゃうでしょ?それは困るんだよね。だから怜花の顔を見たいってなるとちょっと距離必要になっちゃうから、悩んでる。」
「……思ったより全然深刻じゃなかった。」
「深刻でしょ!超重要事項だよ!」
「……誕生日なのに、楽しくない話させようとしてごめんね。」
「全然?むしろ、泣かせる話しか持ってない俺がごめんでしょ。んーじゃあさ、向かい合って、そうだなぁ、怜花の手こうやって握りながら聞いてもらおうかな。」

 律がソファの上で胡坐をかいた。怜花は横座りをして向かい合うと両手がそっと取られる。

「怜花が泣いちゃったら手だけじゃ足りないのでぎゅーに変えます。」
「っ、な、泣かないように歯を食いしばります。」
「えぇーやだやだ。我慢はダメです。ってかさ、何から聞きたい?何でも話す気でいるんだけど、怜花はどこを知りたいかなって。それを話しながら広げたらいいかな。」
「え、えっと、じゃあ、家族構成、かな。お姉さんがいるんだよね?」

 前にサラッと聞いていた姉の存在。親よりも姉の方に対する口ぶりの方が柔らかかった。この切り口からであれば、開始早々泣いてしまうことは避けられるかもしれないと思い、怜花はそう口にした。

「いるいる。あ、えーっと5個くらい違ったかな、多分。看護師やってるよ。二階堂育(いく)。唯一、連絡が取れる身内。」
「連絡、取れるの?」
「うん。俺からはあんまりしないけど、今日も誕生日おめでとうって電話来たよ。マメな性格で、弟の俺が言うのもなんだけど多分一般的に見て美人に入ると思う。なんかすごいモテてた記憶がある。紹介してとかそういうの、結構ウザかったから。」
「……電話、来たんだ。素敵だね。素敵なお姉さん。」
「え、待って待って。っていうかさ、育も怜花のことめちゃくちゃ気に入るんだろうけど、怜花も危ないんだよね……。」
「危ない?」

 律の言わんとすることがわからず、怜花は首を傾げた。

「怜花さ、八幡さんみたいなはっきりした年上女性好きじゃん。仕事できて、言いたいことはっきり言う感じの。育ももれなくそれだから、育にはまだ怜花のこと話してないけど、察しがいいからさ~。だから俺はギリギリまで怜花を隠しておきたいの。育に取られたくない~絶対休みの日とか俺より合わせられるし、私の可愛い妹~とか言って出かけようとするタイプ。俺にはわかる。」

 確かにはっきりした人は好きな方だと思う。律の言いぶりを聞く限りでは好印象だった。そして、何よりも律を大切にしてくれる家族がいて、それに一番安堵した。この先の話はこうもいかないのだろうが、律の方がはるかに自分よりも強くて優しい理由が少しだけ見えた気がした。