夜を繋いで君と行く

* * *

 光の気配を感じて目を開けると、ふわりと微笑む人がそこにはいた。寝顔をずっと見られていたのかと思うと急に恥ずかしさが増して、怜花は薄手の布団の中に潜った。

「えーなんで潜るの。」
「……寝顔、ずっと見てたの?」
「うん。だって多分、本当に途中で1回も起きなかったでしょ。起きた感じしなかった。」
「……そう、だね。眠れた、かも。」
「だからにやけちゃう。目が覚めて苦しそうじゃないんだもん。で、照れて潜ってんでしょ?照れ顔見せてー。」
「や、やだ!」

 怜花は布団の中で律に背を向ける。寝顔をどれだけ長い時間見られていたのかもわからないし、耳も熱いしで今までとは違う意味で少し苦しい。

「背中向けんのはなしー!顔隠すならこっちきてよ。いつもみたいにさ。俺の胸、空いてますよー。」

 背中を向けられるのは嫌だと言っていた律の言葉を思い出す。怜花は潜ったままゴロリと回転し、律の胸に顔をくっつけた。

「え~ほんとに赤いじゃん。なにそれ可愛い。耳引っ張っていい?」
「だめ!」
「だめなの?こんな可愛いのに顔も見せてくれないしさぁ。でもま、いっか。二人してよく眠れたし、もうちょっといちゃいちゃしてよ?」

 怜花の背に律の腕が回る。目を閉じると夢の中で泣いていた、高校生の自分が鮮明に蘇る。夢の中では律の手が、ただ優しく怜花の手を引いていた。その片手は今怜花の背を軽くさすっていて、もう片方の手は怜花の耳をつんつんとつついていた。

「……夢に。」
「ん?」
「出てきたよ、律が。」
「今度はどっか行かなかった?ちゃんと本物の俺だった?」
「うん。……高校生の私の手を引いて歩いてくれてたからちゃんと本物だと思う。」
「高校生の怜花!?えっ!?なにそれ!」

 ぱっと律が腕を離して、二人の間に距離ができる。怜花が少し見上げると興味津々がそのまま乗っかった顔の律がいた。

「夢の中の俺……ずるくない?え?なんで俺よりも先に高校時代の怜花に邂逅しちゃってるわけ?」
「わ、私の頭の中に大人の律しかイメージがない、からかなぁ。」
「いやいや待って。その高校生同士の二人ってのもめちゃくちゃいいけど!俺はまだ高校生の怜花を知らないんだけど!」
「それを言ったら私も、高校生の律を知らないよ。」
「うわー……悔やまれる……まずその夢の中の俺に先を越されたのもだけど……高校生の俺を解禁してれば、怜花の夢の中でラブコメ的展開が……。」
「私たちでラブコメにならなくないかなぁ。」
「なんないか。なんないね。純愛の方だったわ。」
「自分で言うの!?」
「えーだって結構ちゃんと好きだよ、俺。だから怜花がちゃんと、ちょっと元気なの、普通に嬉しい。今日もゆっくりしよ。ってか高校時代の怜花を見たいです。」
「……律の高校時代を知りたいって、言ったら律は、困る?」

 怜花が問いかけると、律は首を横に振った。

「困んないし、話す気でいるけど今じゃないかな。怜花がもうちょっと元気になったらね。多分ね、怜花は落ち込むっていうか、泣くかもしれないから。」
「泣く?どうして?」
「んー…結構俺が嫌な思いしてるから。怜花は俺がきついことに耐えてることが苦手じゃん。しかも怜花と同じように家族ってか父親だけどさ、親だから多分少し被って苦しくなると思う。だから、話すけど今日はまだだめ。泣かせたくないから。」

 静かにそっと零した律の頬に、怜花は手を伸ばした。

「……泣くようなことなんだね。心して聞きます。そのために今日はいっぱい作るし食べる。」
「うん。怜花が完全復帰したら話すから。」

 そう言った律の唇がそっと、怜花の頬に触れた。