思ったよりも冷たい声が出て、これが妹に対する自分の本当の温度だということを改めて感じる。周りがどれだけあの子の容姿を、愛嬌を褒めても一つだって響いたことはなかった。ただ、ほんの少し大切にしてみたかった人を根こそぎ奪われてきたのだから。
「……あーなんか、これで全部辻褄合うなぁ。出会った頃の怜花が男が苦手って言ってたのも、この子が怖いのも。そりゃそうだとしか思えない。笑えないけど、星宮ゆりあ、サイコパス版じゃん。」
「……そう、なの。ほんとに、そう。全然、比じゃない。もっとおかしい、あの子は。でも……。」
「うん。」
律は怜花の力の入った手にそっと触れた。その優しさも体温も今は落ち着いた呼吸のための材料になる。
「……『お姉ちゃんなんだから我慢しなさい』『亜衣花は可愛いからね』って、お母さんは言うんだよ。」
さすがに片目からぽろりと涙が落ちた。これが何の涙なのか、わからない。悲しいのか悔しいのか切ないのか、その全てなのか。
「最悪すぎ。なにそれ。嫌い。」
そう言って律は少し強引に怜花を抱きしめた。少し苦しいくらいの抱きしめ方で、怜花は戸惑う。それに、律の口から出た『嫌い』の言葉に温度がなくて、そしてこんなストレートな物言いをすることが珍しくて少し不安にもなる。
「お、怒った……?」
「いや、今怒ったんじゃなくてずっと怒ってるよ。この手紙来てからずっと。あんまり出してないだけで。俺の可愛い怜花ちゃんを泣かせて、眠れなくさせて、んで結婚するから彼氏紹介しろ、奪ってやるよ、なわけでしょ?それなのに親はっていうか、母親は妹の愚行を容認。そんなの怖いでしょ、普通に。頭がおかしい人しか怜花の家にいないってことになる。あー……最悪。ずっとそんなところにいたの?怖いよ、怖くて当たり前だよ。怜花の防衛本能は正しい。」
『正しい』という言葉のもつ意味も響きも重かった。そしてその重みが怜花の涙腺を刺す。
「俺んとこ来てくれるまで、『怜花』をちゃんと守ってくれてありがとね。」
途端に視界が大きく歪んだ。一気に溢れて、両目から零れ落ちる。律の声も言葉もとどめだった。
「ん?あ、あれ?大丈夫?どうした~?怖くなった?」
「ち……がう……律に、泣かされた……。」
「うわ、最悪な奴になってる俺が!」
「律のせい~……。」
「じゃあずっとぎゅってしてるから、泣き止んだら教えて。」
「こんなのっ……泣き止めないよ……っ。」
「はは、なにそれ可愛い。じゃあずっと抱きしめていいことになるね。最高。」
「……ありがとう、なんて。」
「ん?」
「……言われるって、思って、なかった、から……。」
ずっと必死だった。誰かに必要とされたくて。
好きだと告白してくれた人と、向き合ってみたくて。だが、向き合う前に妹に向き合う権利は移っていた。そんなことが繰り返されるうちに、体を開くことを先にしない自分は選ばれないことを学んだ。かといってそう簡単に体を許してしまえるほど、安売りはできなかった。心よりも体が欲しい男というものは少なからずいることを知ってしまっていたからだった。
「……あーなんか、これで全部辻褄合うなぁ。出会った頃の怜花が男が苦手って言ってたのも、この子が怖いのも。そりゃそうだとしか思えない。笑えないけど、星宮ゆりあ、サイコパス版じゃん。」
「……そう、なの。ほんとに、そう。全然、比じゃない。もっとおかしい、あの子は。でも……。」
「うん。」
律は怜花の力の入った手にそっと触れた。その優しさも体温も今は落ち着いた呼吸のための材料になる。
「……『お姉ちゃんなんだから我慢しなさい』『亜衣花は可愛いからね』って、お母さんは言うんだよ。」
さすがに片目からぽろりと涙が落ちた。これが何の涙なのか、わからない。悲しいのか悔しいのか切ないのか、その全てなのか。
「最悪すぎ。なにそれ。嫌い。」
そう言って律は少し強引に怜花を抱きしめた。少し苦しいくらいの抱きしめ方で、怜花は戸惑う。それに、律の口から出た『嫌い』の言葉に温度がなくて、そしてこんなストレートな物言いをすることが珍しくて少し不安にもなる。
「お、怒った……?」
「いや、今怒ったんじゃなくてずっと怒ってるよ。この手紙来てからずっと。あんまり出してないだけで。俺の可愛い怜花ちゃんを泣かせて、眠れなくさせて、んで結婚するから彼氏紹介しろ、奪ってやるよ、なわけでしょ?それなのに親はっていうか、母親は妹の愚行を容認。そんなの怖いでしょ、普通に。頭がおかしい人しか怜花の家にいないってことになる。あー……最悪。ずっとそんなところにいたの?怖いよ、怖くて当たり前だよ。怜花の防衛本能は正しい。」
『正しい』という言葉のもつ意味も響きも重かった。そしてその重みが怜花の涙腺を刺す。
「俺んとこ来てくれるまで、『怜花』をちゃんと守ってくれてありがとね。」
途端に視界が大きく歪んだ。一気に溢れて、両目から零れ落ちる。律の声も言葉もとどめだった。
「ん?あ、あれ?大丈夫?どうした~?怖くなった?」
「ち……がう……律に、泣かされた……。」
「うわ、最悪な奴になってる俺が!」
「律のせい~……。」
「じゃあずっとぎゅってしてるから、泣き止んだら教えて。」
「こんなのっ……泣き止めないよ……っ。」
「はは、なにそれ可愛い。じゃあずっと抱きしめていいことになるね。最高。」
「……ありがとう、なんて。」
「ん?」
「……言われるって、思って、なかった、から……。」
ずっと必死だった。誰かに必要とされたくて。
好きだと告白してくれた人と、向き合ってみたくて。だが、向き合う前に妹に向き合う権利は移っていた。そんなことが繰り返されるうちに、体を開くことを先にしない自分は選ばれないことを学んだ。かといってそう簡単に体を許してしまえるほど、安売りはできなかった。心よりも体が欲しい男というものは少なからずいることを知ってしまっていたからだった。



