(……ああやっぱり、『何も変わっていない』)
最初の感想がそれだった。『お姉ちゃん』と何度も繰り返すけれど、それほど『お姉ちゃん』が好きなわけではない。むしろ興味はずっと、自分ではなく『お姉ちゃん』を選んだその人にこそある。
少し距離ができていたその空間を、律の腕がゼロにした。
「読み終わった?」
怜花は頷いた。律のスウェットの裾を掴みながら、脳内に反響する妹の声が何度も便箋の文字を読み上げた。するとスッと、律が怜花の手から便箋を奪い取った。二つ折りに戻してテーブルの上に置くと、正面からまっすぐに怜花を抱きしめる。
「俺の感想、言ってもいい?」
再び、怜花は頷いた。
「この子、怜花にじゃなくて、怜花の彼氏に興味がある?」
律の言葉に、怜花はパッと顔を上げた。
「そう、見えた……?」
「うん。だってお姉ちゃんとその彼氏、会いたいレベルで言ったら普通彼氏よりお姉ちゃんでしょ。しかも電話が繋がらないならなおさら。なのにこの子からの手紙にはいるかもわからない『彼氏』の話が不自然に盛り込まれている。気味悪い。」
「……そう、なの。ずっと、そう。」
「ずっと?」
律の声が柔らかく一段甘いトーンに変わる。
「自分じゃなくて『お姉ちゃん』を選ぶ人がいたらね、だめなの。あの子の中では。あの子は誰からも好かれて、どの人からも特別じゃないと、だめ。『お姉ちゃん』を選ぶ人はどんな人も、手に入れる。」
「……なるほどね。それは、きつい。」
父や母から特別選ばれたという感覚をもったことはなかったけれど、亜衣花は何を買うにせよ『お姉ちゃんよりもっと』を願った。『亜衣花は可愛いから』『お姉ちゃんばっかり』、この二つの言葉と潤んだ瞳と甘えた声。それらを駆使して生きていた。
「だってその子はさ、別に怜花のことを選んだ人を好きってわけじゃないってことだよね。なのに手に入れるってことは何が起こるわけ?」
律の疑問は至極当然だった。こんなことをする人が身内にいるということで、軽蔑されてしまうかもしれない。そんな思いもある。しかし、隠せない。だって律は疑問をもってしまったのだから。
「……誰とでも、寝るの。私から奪うためならね、誰とでもどれだけでも体を明け渡せてしまうんだよ。」
最初の感想がそれだった。『お姉ちゃん』と何度も繰り返すけれど、それほど『お姉ちゃん』が好きなわけではない。むしろ興味はずっと、自分ではなく『お姉ちゃん』を選んだその人にこそある。
少し距離ができていたその空間を、律の腕がゼロにした。
「読み終わった?」
怜花は頷いた。律のスウェットの裾を掴みながら、脳内に反響する妹の声が何度も便箋の文字を読み上げた。するとスッと、律が怜花の手から便箋を奪い取った。二つ折りに戻してテーブルの上に置くと、正面からまっすぐに怜花を抱きしめる。
「俺の感想、言ってもいい?」
再び、怜花は頷いた。
「この子、怜花にじゃなくて、怜花の彼氏に興味がある?」
律の言葉に、怜花はパッと顔を上げた。
「そう、見えた……?」
「うん。だってお姉ちゃんとその彼氏、会いたいレベルで言ったら普通彼氏よりお姉ちゃんでしょ。しかも電話が繋がらないならなおさら。なのにこの子からの手紙にはいるかもわからない『彼氏』の話が不自然に盛り込まれている。気味悪い。」
「……そう、なの。ずっと、そう。」
「ずっと?」
律の声が柔らかく一段甘いトーンに変わる。
「自分じゃなくて『お姉ちゃん』を選ぶ人がいたらね、だめなの。あの子の中では。あの子は誰からも好かれて、どの人からも特別じゃないと、だめ。『お姉ちゃん』を選ぶ人はどんな人も、手に入れる。」
「……なるほどね。それは、きつい。」
父や母から特別選ばれたという感覚をもったことはなかったけれど、亜衣花は何を買うにせよ『お姉ちゃんよりもっと』を願った。『亜衣花は可愛いから』『お姉ちゃんばっかり』、この二つの言葉と潤んだ瞳と甘えた声。それらを駆使して生きていた。
「だってその子はさ、別に怜花のことを選んだ人を好きってわけじゃないってことだよね。なのに手に入れるってことは何が起こるわけ?」
律の疑問は至極当然だった。こんなことをする人が身内にいるということで、軽蔑されてしまうかもしれない。そんな思いもある。しかし、隠せない。だって律は疑問をもってしまったのだから。
「……誰とでも、寝るの。私から奪うためならね、誰とでもどれだけでも体を明け渡せてしまうんだよ。」



