怜花を抱きしめる律の腕がぎゅっと強くなった。そして怜花の肩にはいつものように律の頭が落ちてきて、はぁと深い呼吸の音が聞こえる。
「……俺、疲れてるように見えた?」
「ううん。ずっと律が頑張ってた。私が眠れてないから、起きてくれて傍にいてくれて。……何度も起こしてごめんね。寝不足にさせちゃった。仕事、大丈夫だった?トラブルとかは起きてない?」
「うん。ないよ。いつも通り。」
「そっか。良かった。……その、私がね、逃げてたというか、嫌だったこととかそういう、私がだめなのかもしれないって思うようなこととか記憶とか全部が一気に戻ってきちゃって、おかしくなっちゃったけど……本当は律にいっぱい迷惑かけたくないんだけど……でも今日で一回、ガツンと迷惑かけて毎日の迷惑を減らしていつも通りの生活に戻れるならそっちの方がいいかなとか思っ……。」
「迷惑かけていいよ。だって俺も、怜花にしか迷惑かけてない。……いや、九重くんにも迷惑かけてるけど、それは仕事で返すからとりあえずいいってことにして……。ただの俺としての迷惑は、怜花にしかかけてない。だから怜花も、俺にはいいんだよ。」
律の言葉に、怜花は律の腕の中で頷いた。そしてゆっくり手紙を持っていない方の手を背中に回した。
「……うん。律のこと、迷惑だなんて思ったこと、一度もないけど。でもそれはきっと、律も同じなんじゃないかなって少し、思えるようになったから。」
嫌われたくない。重荷になりたくない。人生の邪魔をしたくない。色々な『ない』を思っている。それらをしないためにできることは、律に何も話さないことではない。
「……泣いちゃっても、震えても、声が出なくなっても、いてくれるんでしょう?」
「いるのは当たり前。危ないなってなったら、話すの途中中断させるかもしれないけど、あとは邪魔しないよ。怜花が話したいように話してよ。俺も聞きながら、怜花にしたいことするから。」
「うん。じゃあ……。」
怜花が腕を緩めると、それに伴って律の腕もゆっくりと落ちた。そして二人の視線はまっすぐにぶつかった。
「あけ、ます。」
「うん。」
封筒には便箋が1枚入っていた
『お姉ちゃん
久しぶりだね。元気にしてる?ずっとお家に帰ってこないので、彼氏でもできたのかなってみんなで話してるよ。
もしお姉ちゃんに彼氏がいるなら、どんな人か知りたいし、亜衣花のことも知ってもらいたいから、会いたいなぁ。
それでね、なんでいきなり手紙を書いたかっていうと(お姉ちゃんの電話番号って変わった?何度かけても繋がらなかったよ)
私、今度結婚するんだ。だからお姉ちゃんには亜衣花の結婚式に絶対出てほしくて!
旦那さんはね、優しくてかっこよくて亜衣花のことを大切にしてくれる人です。
ウェディングドレス選びもすっごく楽しくて、どれも似合うねって言ってくれるから、決め切れなくて困っちゃったよ。
お姉ちゃんはどういうのを選ぶのかな?お姉ちゃんより先に幸せになっちゃうけど、許してね?
お姉ちゃんが幸せなら、その話も詳しく聞きたいです。
招待状ももう少ししたら送るね!』
不思議と、涙は出なかった。ただゆっくりと、小刻みに体が震え始めてしまっていた。
「……俺、疲れてるように見えた?」
「ううん。ずっと律が頑張ってた。私が眠れてないから、起きてくれて傍にいてくれて。……何度も起こしてごめんね。寝不足にさせちゃった。仕事、大丈夫だった?トラブルとかは起きてない?」
「うん。ないよ。いつも通り。」
「そっか。良かった。……その、私がね、逃げてたというか、嫌だったこととかそういう、私がだめなのかもしれないって思うようなこととか記憶とか全部が一気に戻ってきちゃって、おかしくなっちゃったけど……本当は律にいっぱい迷惑かけたくないんだけど……でも今日で一回、ガツンと迷惑かけて毎日の迷惑を減らしていつも通りの生活に戻れるならそっちの方がいいかなとか思っ……。」
「迷惑かけていいよ。だって俺も、怜花にしか迷惑かけてない。……いや、九重くんにも迷惑かけてるけど、それは仕事で返すからとりあえずいいってことにして……。ただの俺としての迷惑は、怜花にしかかけてない。だから怜花も、俺にはいいんだよ。」
律の言葉に、怜花は律の腕の中で頷いた。そしてゆっくり手紙を持っていない方の手を背中に回した。
「……うん。律のこと、迷惑だなんて思ったこと、一度もないけど。でもそれはきっと、律も同じなんじゃないかなって少し、思えるようになったから。」
嫌われたくない。重荷になりたくない。人生の邪魔をしたくない。色々な『ない』を思っている。それらをしないためにできることは、律に何も話さないことではない。
「……泣いちゃっても、震えても、声が出なくなっても、いてくれるんでしょう?」
「いるのは当たり前。危ないなってなったら、話すの途中中断させるかもしれないけど、あとは邪魔しないよ。怜花が話したいように話してよ。俺も聞きながら、怜花にしたいことするから。」
「うん。じゃあ……。」
怜花が腕を緩めると、それに伴って律の腕もゆっくりと落ちた。そして二人の視線はまっすぐにぶつかった。
「あけ、ます。」
「うん。」
封筒には便箋が1枚入っていた
『お姉ちゃん
久しぶりだね。元気にしてる?ずっとお家に帰ってこないので、彼氏でもできたのかなってみんなで話してるよ。
もしお姉ちゃんに彼氏がいるなら、どんな人か知りたいし、亜衣花のことも知ってもらいたいから、会いたいなぁ。
それでね、なんでいきなり手紙を書いたかっていうと(お姉ちゃんの電話番号って変わった?何度かけても繋がらなかったよ)
私、今度結婚するんだ。だからお姉ちゃんには亜衣花の結婚式に絶対出てほしくて!
旦那さんはね、優しくてかっこよくて亜衣花のことを大切にしてくれる人です。
ウェディングドレス選びもすっごく楽しくて、どれも似合うねって言ってくれるから、決め切れなくて困っちゃったよ。
お姉ちゃんはどういうのを選ぶのかな?お姉ちゃんより先に幸せになっちゃうけど、許してね?
お姉ちゃんが幸せなら、その話も詳しく聞きたいです。
招待状ももう少ししたら送るね!』
不思議と、涙は出なかった。ただゆっくりと、小刻みに体が震え始めてしまっていた。



