「どういう意味ですかぁそれ!」
「言葉通りの意味です。椅子は他にもあります。そちらにおかけください。」
「律さんと話したいんですー私は!」
五十嵐が目の前にいてもこの発言ができてしまうのだから怖い。最近の若い子のなせる業なのか、そもそもこの子だけが特殊でそうなのかはわからないが、自分が前に出ることで律が相手をしなくて済むのであればそれに越したことはない。
「大変失礼なことを申し上げているのは承知しております。ただ、事務所としましては二階堂の身体および精神の安全が第一です。どうかご理解ください。」
怜花は律とゆりあの間に立ったまま、まっすぐにゆりあを見つめた。ゆりあの視線が怜花から外れ、怜花の背後にいる律の方に移った。
「律さぁん!この人は何なんですか?いつものマネージャーさんじゃないですよねぇ?」
「マネージャー兼ボディーカードみたいな感じです。さっき言ったことが全てです。昨日のこと、なかったことにしないでください。」
静かな律の声がぽつりと落ちた。さっきの声との違いに心配になって怜花が咄嗟に律を振り返ると、律はゆりあの方を一切見ずに、机を見つめたままだった。
不意に律の手が、怜花の手首の裾を引いた。
「マネージャー、隣座っててもらっていい?」
「しょ、承知いたしました。…失礼します。」
椅子をそのまま引き、怜花はすとんと座った。怜花の丁度目の前には五十嵐がいた。律とゆりあをそれぞれ見た後、五十嵐は優しい笑みを怜花に向けた。
「それにしても動きがいいですね、一橋さんは。何かやってるんですか?」
「い、いえ、今は何もやっていませんが、護身術を習っていた時期があります。中学からは陸上部でした。」
「あぁ、なるほど。だから体幹がしっかりしてるんですね。」
「今のはギリギリでした。…少し鍛え直さないといけないかもしれません。」
怜花がそういうと、楽しそうに『もっと俊敏になったらぜひスケッチさせてほしいな』と五十嵐は言った。そしてゆっくりとゆりあに視線を移すと、五十嵐は再び口を開いた。
「二階堂くんが例の記事の火消しをしてくれたんだよ。だから、今日の舞台挨拶では君たちを隣に配置しないし、質問もそれぞれに振るように調整している。…たかが熱愛報道で、と君は思うかもしれないけれど、嘘でも本当でも傷つく人はいる。人の注目を浴びながらする仕事というのは、そういう側面があることを忘れてはいけないと僕は思うよ、星宮さん。…さ、座って。」
静かな監督の言葉に、抵抗する術をなくしたゆりあはそのまま従った。
「言葉通りの意味です。椅子は他にもあります。そちらにおかけください。」
「律さんと話したいんですー私は!」
五十嵐が目の前にいてもこの発言ができてしまうのだから怖い。最近の若い子のなせる業なのか、そもそもこの子だけが特殊でそうなのかはわからないが、自分が前に出ることで律が相手をしなくて済むのであればそれに越したことはない。
「大変失礼なことを申し上げているのは承知しております。ただ、事務所としましては二階堂の身体および精神の安全が第一です。どうかご理解ください。」
怜花は律とゆりあの間に立ったまま、まっすぐにゆりあを見つめた。ゆりあの視線が怜花から外れ、怜花の背後にいる律の方に移った。
「律さぁん!この人は何なんですか?いつものマネージャーさんじゃないですよねぇ?」
「マネージャー兼ボディーカードみたいな感じです。さっき言ったことが全てです。昨日のこと、なかったことにしないでください。」
静かな律の声がぽつりと落ちた。さっきの声との違いに心配になって怜花が咄嗟に律を振り返ると、律はゆりあの方を一切見ずに、机を見つめたままだった。
不意に律の手が、怜花の手首の裾を引いた。
「マネージャー、隣座っててもらっていい?」
「しょ、承知いたしました。…失礼します。」
椅子をそのまま引き、怜花はすとんと座った。怜花の丁度目の前には五十嵐がいた。律とゆりあをそれぞれ見た後、五十嵐は優しい笑みを怜花に向けた。
「それにしても動きがいいですね、一橋さんは。何かやってるんですか?」
「い、いえ、今は何もやっていませんが、護身術を習っていた時期があります。中学からは陸上部でした。」
「あぁ、なるほど。だから体幹がしっかりしてるんですね。」
「今のはギリギリでした。…少し鍛え直さないといけないかもしれません。」
怜花がそういうと、楽しそうに『もっと俊敏になったらぜひスケッチさせてほしいな』と五十嵐は言った。そしてゆっくりとゆりあに視線を移すと、五十嵐は再び口を開いた。
「二階堂くんが例の記事の火消しをしてくれたんだよ。だから、今日の舞台挨拶では君たちを隣に配置しないし、質問もそれぞれに振るように調整している。…たかが熱愛報道で、と君は思うかもしれないけれど、嘘でも本当でも傷つく人はいる。人の注目を浴びながらする仕事というのは、そういう側面があることを忘れてはいけないと僕は思うよ、星宮さん。…さ、座って。」
静かな監督の言葉に、抵抗する術をなくしたゆりあはそのまま従った。



