夜を繋いで君と行く

* * *

「電気消すよ?」
「うん。」

 シングルベッドが二つの部屋ではあったが、律が『一人は嫌』と言ったため、怜花のベッドに律を招いた。普段は広いベッドの真ん中で眠っているため、物理的に狭いベッドで眠って律が本当に休めるのか気になって、怜花は明かりを落とした後にそっと律の頬に触れた。

「ん?」
「…狭くて眠れないとか、ない?大丈夫?」
「んー…大丈夫。何ならもう…ふあ…あ、ほら、欠伸出るくらいには眠いよ。」
「…良かった。寝よ?」
「…怜花。」
「何?」

 枕元のライトを少しだけ点けていたため、薄暗い中でも律の表情は見えた。確かに少し目はとろんとしていたが、布団の中で握られた手の力はそこまで弱まってはいなかった。布団から握られた手が引かれ、律の唇がそっと怜花の指に触れた。

「キスは、してもいいこと?それとも、怜花がしてくれるもの?」
「…その質問、さ。」
「うん。」
「ずるいよね。」

 怜花は少しだけ睨んでみることにした。しかし律には何の効果もなかったようだ。『何がー?』なんて気の抜けた声が戻ってくる。怜花は小さくため息をついた。

「…だって、しないっていう選択肢がないじゃない?」
「だって、キスはしてない、今日。」
「今日は出張で仕事ですよ、二階堂さん。」
「うわ、その呼び方嫌だ~本日は閉店しました~…今はもう、オフだよ。」
「…仕事での泊まり、だから…だ、抱きしめるのもいいのかなっていうか、セーフかなとか考えてたのに…。しちゃったけれども!」

 怜花が白状すると、律は少しだけ声をあげて笑った。

「真面目だなぁ、怜花。…じゃあそんな怜花の真面目さを利用させてもらおうかな。」
「…またずるいこと言うつもり?」
「うん。…キス、怜花からしてほしい、な。…すっごいよく眠れそうだから。」
「…っ…寝かせたいならしてってこと?」
「うん。…いっぱいは、仕事全部終わってからにするから、1回だけ。」

 怜花は唇を一度、きゅっと結んだ。そして意を決して律の唇に自分のものをそっと重ねた。いつもよりほんの少し、長く。唇が離れると、怜花はそのまま律の目を手で覆った。

「うわ、何~?」
「おしまい。はい、寝て。」
「目隠しされたら怜花の寝顔見れないじゃん。」
「律が寝るのを見張ってから私が寝るんだから、どっちにしろ見れないので諦めて。」
「…なんか、厳しくない?」
「き、厳しくするよ。何でも自分のせいにして窒息しかけた罰!もうほんとに寝て!」
「…ふふ、初めてだね、なんか…ちょっと厳しい怜花。」
「…嬉しそうにしてなくていいから、寝るの。」
「…うん。おやすみ。」

 目から手を離し、律の手を取る。そして優しく、熱が伝わるように握った。

「…おやすみ。」