夜を繋いで君と行く

「…今日、彼女、舞台挨拶出なかったじゃん。」
「うん。」
「あれさぁ、俺のせいなんだよね。」
「え…?」

 体調不良だと言われていたし、それ以上確認する方法もなくてそのまま飲み込んでいたが、急に話の方向性が変わって怜花は律の頭が肩から落ちない程度に体を向けた。

「…わざと、傷つけた。泣くだろうな、キレるだろうな、不快になるだろうな、…とか、いろんなこと思って、でも最後まで言った。…記事になったことを喜んでいる態度が、…許せなくて。言いながら、…残酷なことしてるなーって、思った。」
「…律。」
「ん?」
「頭、起こせる?」
「…うん。」

 律はゆっくりともたれていた頭を上げた。そして、今にも泣きそうな顔で、怜花の方を見つめた。

「軽蔑、した?」
「するわけないでしょ!」

 手を握っていない方の腕をできる限り回して、怜花の方から律をぎゅっと抱きしめた。驚いたのか、繋いでいた手の力が緩み、その隙に怜花はその手をそのまま律の背中に回す。

「もー…ほんっと…突撃してよかった…。迷惑かもしれないとか、呆れられちゃうかもとか思ったけど、…そんなの関係なかった!…この夜に、律を一人にしないでいられて、よかった。」

 隙間の一つもないように、びったりと体をくっつけて抱きしめる。律の腕を上から怜花が押さえてしまっているため、いつもなら抱きしめ返されるようなタイミングなのに、律は動けないでいた。

「…抱きしめたい。」
「し、しばらくだめ!黙って私に抱きしめられてて!律は与えなくていいの!」
「…怜花、怒ってる?」
「ずっと心配してる!…充分抉られてるのに、自分で抉るようなこと、言わないで。…律は、私なんかよりもずっと、自分に厳しすぎるよ。…息しててよ。自分で自分の首、絞めないで。」
「…はは、そっか。自分で自分の首絞めてるから苦しいのかぁ…。…せっかく怜花が、息しやすいようにいてくれてるのに。」

 怜花は律の背中をポンポンと同じリズムで軽く叩く。そして、少しだけ背筋を伸ばして律の耳元に唇を寄せた。

「…もう、本当にそうだよ。ちゃんといるから、…ずっと、律の近くにいるよ。律がずっと先回りして気を遣い続けなくても、私は律の傍にいる。心配もする。…あんまり心配させるとまたこういう突撃、やるかもしれないからね。…ちゃんと覚えてて。」
「…忘れられないよね、こんなの。ねぇ、俺はいつになったら、怜花を抱きしめていいの?」