夜を繋いで君と行く

* * *

「あ、おかえり。打ち合わせ終わった?」
「うん。」
「お湯ためてあるよ。ゆっくり浸かって、あったまって。」
「…怜花、先に寝ないでね。」
「寝ないよ。出てきたら髪乾かしてあげるよ、律。」

 怜花はそう言って律の背中を軽くポンと叩いた。律は小さく笑みを落とすと自分の荷物から着替えを取り出して、バスルームに向かった。
 九重から宿も移動手段も全て手配するので来てほしいという連絡があって、その勢いのままここまで来た。てっきり宿は一人部屋だと思っていたが、九重は律と怜花の二人部屋で手配し直したらしく、夜は二人で過ごすこととなった。ホテルに着き、九重の部屋で明日の打ち合わせと来週の収録の変更についての確認があるとのことで、怜花は先に一人で部屋にいた。律が打ち合わせ後にすぐ休めるように、自分はさっとシャワーを済ませ、自分の身の回りのことは全て終わらせていた。

(…ちょっと暗かったな、律。…新幹線で少し持ち直したかなって思ってたんだけど、何かあったのかも。)

 最初から律より先に眠るつもりもなかったし、律が話したいことがあるなら全て聞く気でいた。対外的には『新人マネージャー』の体をとっていても、怜花には実際のマネージャーとしてのスキルはない。だとすれば、律が零した本音を拾って寄り添うことくらいしか、今の自分に役立てることはなかった。

(…勝手なことして、ちょっと呆れてるところも、…あるかな、もしかして。)

 手を握ったときに握り返してくれたことからも怒ってはいないという感じは汲み取れた。しかし、何の連絡もなしに、何か大それたことができるわけでもないのにただ来たことには、呆れられたり、余計な心配をさせたりする要素があったかもしれないと冷静になると思う。律に会えるまでは、そんな冷静な自分はなりをひそめ、ただ大丈夫なのかどうかだけが気になって、それが怜花の気持ちと行動の後押しをした。
 そんな時、怜花のスマートフォンが震えた。着信は里依だった。

「もしもし。」
『怜花!二階堂さんのところに行ったって本当?』

 思っていたよりも勢いのいい里依の声に、怜花はクスっと笑った。最近の里依は何かと声が大きくて、前のめりに心配してくれている。