「ですよね、わかりますよ。」
「正直に言うと…そこまでしなくてもいいのでは…って思ってしまう自分がいます。」
「そうなんですよ、怜花さんのおっしゃる通りで。声優としての技術では完璧というか、依頼者を納得させるものをとは思いますが、それ以外の部分でそこまでしなくてもいいところまで気を配る。…どうやらこれは、自分のコントロール外のようなんです。もう、『そうすることが当たり前』になっている。持ち前のスペックの高さ故に長い間こなしてきてしまったのではないかと推察していますが、二階堂さんは過去のことを一切語らないので、あくまでまだ僕の考えの範疇を出ませんが。」
「…過去の、…こと。」
ぼんやりと誤魔化した形で口にしたことは、お互いにあった。不仲であること、家族の味を覚えていないこと、会いたくないし、会わせたくないこと。そこだけが共通で、そこまでに至る道はまだ何一つ聞くことはできていないし、話すこともできていない。
「怜花さんに話していたとしても、僕に話せなんて強要はしませんから安心してください。そういう話をしてもいい、と信頼してもらえてやっと話してもらえることであることは承知しています。」
「…そう、ですね。信頼してもらえることも、信頼することも、…大事、です。」
いつかそういう話になったときに、自分は崩れずに話すことができるのか、受け止めることができるのか。そんなことを考えるとうっすらとよくわからない重さがまとわりついてくる。だが、たとえ上手にできなかったとしても、それでも今はそこから逃げたいとは思わない。
「はい。…僕はね、嬉しいです。怜花さんがいるってわかった瞬間に二階堂さんの気が抜けたのが、一瞬でわかりました。『二階堂律』という声優を生かそうとする人が増えたと、僕にはそう見えました。…物語の中で、ヒーローは遅れてやってきますよね。女性にヒーローという言葉を使うのが不適切でしたら申し訳ありません。それでも、今日の怜花さんは、二階堂さんにとって『ヒーロー』だったと思うんです。」
九重の笑みが一層深くなった。怜花の心臓はドクドクと鳴る。普通のヒロインになれたことなど一度もない自分が『ヒーロー』なんて言われたことが上手く噛みしめられなくて、心臓の音がただただ体の中で反響する。
「正直に言うと…そこまでしなくてもいいのでは…って思ってしまう自分がいます。」
「そうなんですよ、怜花さんのおっしゃる通りで。声優としての技術では完璧というか、依頼者を納得させるものをとは思いますが、それ以外の部分でそこまでしなくてもいいところまで気を配る。…どうやらこれは、自分のコントロール外のようなんです。もう、『そうすることが当たり前』になっている。持ち前のスペックの高さ故に長い間こなしてきてしまったのではないかと推察していますが、二階堂さんは過去のことを一切語らないので、あくまでまだ僕の考えの範疇を出ませんが。」
「…過去の、…こと。」
ぼんやりと誤魔化した形で口にしたことは、お互いにあった。不仲であること、家族の味を覚えていないこと、会いたくないし、会わせたくないこと。そこだけが共通で、そこまでに至る道はまだ何一つ聞くことはできていないし、話すこともできていない。
「怜花さんに話していたとしても、僕に話せなんて強要はしませんから安心してください。そういう話をしてもいい、と信頼してもらえてやっと話してもらえることであることは承知しています。」
「…そう、ですね。信頼してもらえることも、信頼することも、…大事、です。」
いつかそういう話になったときに、自分は崩れずに話すことができるのか、受け止めることができるのか。そんなことを考えるとうっすらとよくわからない重さがまとわりついてくる。だが、たとえ上手にできなかったとしても、それでも今はそこから逃げたいとは思わない。
「はい。…僕はね、嬉しいです。怜花さんがいるってわかった瞬間に二階堂さんの気が抜けたのが、一瞬でわかりました。『二階堂律』という声優を生かそうとする人が増えたと、僕にはそう見えました。…物語の中で、ヒーローは遅れてやってきますよね。女性にヒーローという言葉を使うのが不適切でしたら申し訳ありません。それでも、今日の怜花さんは、二階堂さんにとって『ヒーロー』だったと思うんです。」
九重の笑みが一層深くなった。怜花の心臓はドクドクと鳴る。普通のヒロインになれたことなど一度もない自分が『ヒーロー』なんて言われたことが上手く噛みしめられなくて、心臓の音がただただ体の中で反響する。



