夜を繋いで君と行く

「迎えに行くだけでいいじゃん。なんでご飯食べんのさ、俺抜きで。」
「二階堂さんがなかなか会わせてくれないからですよ。何言ってるんですか。」
「彼女をマネージャーに会わせなきゃいけないルールとかなくない?」
「家族はいない、緊急連絡先に書ける人はいない、の一点張りだった人がこの人をと言ってきた方に興味をもたないマネージャーは、マネージャー以前に人と仕事をすることに向かないと思いますけどね、僕は。」

 九重の鋭い言葉に、珍しく律が沈黙した。

(…ど、どういうパワーバランスなんだろう、この二人って…。もしかして、九重さんの方が強い…のかな?)

 完全に怜花が沈黙してしまっていることに気付いた九重が、怜花にぺこりと頭を下げた。

「二階堂さんの体調不良時からここまで、あらゆる面でサポートいただきありがとうございました。おかげさまで僕も必要最低限のフォローで、他業務に支障をきたすことなく事を終えられました。重ね重ね、お礼申し上げます。」
「あっ、いえ!それは最初に何度も言っていただいてますし、…その、役に立っていたのならよかったです、本当に。」

 律は残っていた白米を口に運ぶと、怜花の片手を取ってキュッと握り、窓の方に顔を向けて帽子を深く被った。

「…なんとなくわかった、九重くんが怜花と話したかった理由とか、話したこととか。…ちょっと寝る。起きなかったら起こして。」
「承知いたしました。ゆっくり休んでください。」

 律に左手を掴まれたままの怜花は、残っているお弁当を何とか食べ終え、蓋を閉じた。その頃には少しだけ律の手の力が抜けていた。

「やはり寝不足だったようですね、二階堂さん。」
「…かもしれません。」

 九重の静かに落ちた言葉に引っ張られ、怜花もそのまま同調した。いつもの律の手は怜花のものより体温が高い。しかし今日は違う。少し回復したと思っても、再び触れると冷たくなってしまっているのだ。
 怜花は起こさないように気をつけながら、少しでもこの手を温めたくて力を込めて握った。

「寝不足でも、こんな風に移動中に眠ることは珍しいですけどね。」
「そうなんですか?」
「はい。人前では眠らないし、大騒ぎこそしないですがそれなりに現場を盛り上げますし、コミュニケーションもほどほどにとる。…スマートな人です、対外的な場面では。完璧すぎるからこそ、反動も大きいんでしょうけど。」
「…やっぱり、外では…頑張ってるというか、そうかなとは思ってましたけど…えっと、想像以上でした。」

 怜花がそう白状すると、九重は柔らかな笑みを浮かべて怜花の方を向いた。