夜を繋いで君と行く

* * *

「怜花、それ一口ちょうだい?」
「うん、好きなの食べていいよ。」
「…二階堂さん、怜花さんの食べる分がなくなってしまいますが。」
「そんなに食べてないし、怜花も俺のやつ、好きなのつついてよ。」
「私そこまでお腹空いてないから気にしないでちゃんと食べな?九重さん、ご配慮ありがとうございます。」

 窓際に律、真ん中は怜花、通路側は九重という組み合わせで新幹線に乗り、3人で駅弁をつついていた。律は食べながら話すことはあまりなく、時折窓の外を眺めてはぼんやりしていた。

「二階堂さんも顕著ですね。」
「何が?」
「怜花さんが来た途端、ちゃんと食べれるようになるんですね。」
「え?食ってなかったっけ?」
「北海道でほとんど僕に押し付けたのをお忘れですか?」
「あ、…あー…あったね、そんなことも。」
「…北海道で、ちゃんと食べてなかったんですか?」

 美味しいものがあった話は聞いた。しかし、いつも美味しそうに食べる律が食べるのを誰かに押し付ける姿が想像できなくて、怜花の声は沈んだ。九重ははぁっと深くため息をついてから話し始めた。

「まぁあの日は彼女がなかなか二階堂さんを離しませんでしたからね。」
「…あー…うん。…なんか、せっかく新鮮な魚とかが売りのお店だったのに、味が…ちゃんとしなくて。」
「二階堂さんって繊細なんですよね、割と。」
「九重さんもそう思いますか?」
「ちょっと待ってよ。」

 慌てて止めた律の声もむなしく、怜花は九重の方を向いて少しだけ身を乗り出した。九重はわざとらしくうんうんと頷いて、言葉を続けた。

「何かあると喋らなくなりますね。あくまでそこそこ上手く喋るのは表でというか、仕事上はです。本来静かな人ですし、こう見えて。」
「そ、そうなんですよ…!良かったです、私だけがそう思ってたわけじゃなくて。」
「ねぇあのさぁ、俺の声届いてる?なんで二人はそんなにもうすでに仲良いわけ?」

 少しの不機嫌さを滲ませた声で律が少し睨みながら二人を見た。愉快そうな顔をした九重と、その隣の怜花は『えっと…』と言いながら視線を彷徨わせている。

「まぁ、駅前で軽く食事した仲ですからね、僕たち。」
「はぁ!?」
「あ、えっと、その、私が着いた後迎えに来てくださったんだよ。駅まではわかるけど、そこからはその、関係者の方しか本来は入れないルートでの移動だったから。」
「まぁ、そういうことです。」