* * *
翌日の11時から、初回上映後の舞台挨拶が入っていた。その後少しの休憩を挟んで、上映前に舞台挨拶を行って移動というスケジュールだ。昨日のネット記事が出てから最初の公の場となるため、おそらく注目度が高い。司会があえてその話題に触れるとは考えにくいが、『彼女』本人が何かをする可能性は大いにあるため、それを思うとただただ足が重くなった。
朝、九重と会話をしたが、九重の姿はそれ以降見えなくなってしまった。劇場の控室にはさすがに早めに来てほしいが、ゆりあと一対一で対峙し、そろそろ牽制をするべき時なのかもしれない。『それ以上は許さない』と。
(…まずは監督に謝らないと。こんな風に注目を集める必要なんて、なかったんだから。)
丁寧なキャラクター作りと緻密な脚本を描ける、稀有な才能と努力の人である五十嵐監督の作品に出ることができることも、作品作りを一緒に行ったこともどれも学びの多い、楽しいものだった。一番日の目を見るタイミングでの記事は、正直今の律には本当に苦しかった。
ノックをしたが返事がない。そのためそのままガチャリと控室のドアを開けた。するとそこにはいつもは一番遅く入ってくるゆりあがいた。律を視界に捉えた瞬間に、ゆりあの表情はぱあっと輝いた。
(…本当に、俺の表情なんて見えてないんだな…。)
怜花の言っていた通りだと思った。見る気のない人には表情の示す感情は届かない。
「おはようございます…あのっ…律さんも記事、見ました?」
(…開口一番名前で呼んで、内容はそれ。…もう、ダメだな。この人は本当に踏んじゃいけないものを、明確に踏んだ。)
「事実無根の記事ですね。なぜ否定してくれなかったんですか?」
「え?」
まるで何を言われているかわからないといった表情を浮かべるゆりあに、律の方が心拍が上がる。良くない息苦しさと、虚しさが頭と心の中を渦巻いていく。
「事務所がプライベートをあなたに任せるのは自由ですが、僕は関係ありません。巻き込まないでください。」
「えっ?だってあの、二階堂さん、いつも隣にいてくださってますし、仲良くさせてもらってますよね?」
「…好きであなたの隣にいるわけないでしょう?仕事だからです。」
個人として、あまりも冷たい声が出てしまった。
翌日の11時から、初回上映後の舞台挨拶が入っていた。その後少しの休憩を挟んで、上映前に舞台挨拶を行って移動というスケジュールだ。昨日のネット記事が出てから最初の公の場となるため、おそらく注目度が高い。司会があえてその話題に触れるとは考えにくいが、『彼女』本人が何かをする可能性は大いにあるため、それを思うとただただ足が重くなった。
朝、九重と会話をしたが、九重の姿はそれ以降見えなくなってしまった。劇場の控室にはさすがに早めに来てほしいが、ゆりあと一対一で対峙し、そろそろ牽制をするべき時なのかもしれない。『それ以上は許さない』と。
(…まずは監督に謝らないと。こんな風に注目を集める必要なんて、なかったんだから。)
丁寧なキャラクター作りと緻密な脚本を描ける、稀有な才能と努力の人である五十嵐監督の作品に出ることができることも、作品作りを一緒に行ったこともどれも学びの多い、楽しいものだった。一番日の目を見るタイミングでの記事は、正直今の律には本当に苦しかった。
ノックをしたが返事がない。そのためそのままガチャリと控室のドアを開けた。するとそこにはいつもは一番遅く入ってくるゆりあがいた。律を視界に捉えた瞬間に、ゆりあの表情はぱあっと輝いた。
(…本当に、俺の表情なんて見えてないんだな…。)
怜花の言っていた通りだと思った。見る気のない人には表情の示す感情は届かない。
「おはようございます…あのっ…律さんも記事、見ました?」
(…開口一番名前で呼んで、内容はそれ。…もう、ダメだな。この人は本当に踏んじゃいけないものを、明確に踏んだ。)
「事実無根の記事ですね。なぜ否定してくれなかったんですか?」
「え?」
まるで何を言われているかわからないといった表情を浮かべるゆりあに、律の方が心拍が上がる。良くない息苦しさと、虚しさが頭と心の中を渦巻いていく。
「事務所がプライベートをあなたに任せるのは自由ですが、僕は関係ありません。巻き込まないでください。」
「えっ?だってあの、二階堂さん、いつも隣にいてくださってますし、仲良くさせてもらってますよね?」
「…好きであなたの隣にいるわけないでしょう?仕事だからです。」
個人として、あまりも冷たい声が出てしまった。



