私の婚約者は、嘘ばっかり〜クズだけど優しい彼〜

今度は急に真剣な声色で。

あごに当てられた指先でくいっと顔を上げられる。


背の高い七瀬くんと目を合わせた、メガネ越しに見える瞳は凛として。


目が離せない。
そんな瞳で見られたら…

「…っ」

もう目を離せない、離したくない。


このまま七瀬くんから…



「好きです、衣咲さん」



静かにメガネを外した、あってもなくても変わらない伊達メガネを。

外して、ゆっくり顔を傾けた。



近付く、唇に。



―…っ



たぶん逃げられた。

きっと避けられた。


でも…、目を閉じてしまったの。


2人きりだったから。

誰にも見られてないと思ったから。


七瀬くんしかいない。

素直な私のままでいられる、りんご飴をかじったあの日みたいに。


もう一度、かじりたくなったの。

りんご飴の食感が忘れられなくて。


そっと離れた時には、自分から顔を上げた。

七瀬くんの方を見て、何も言えなかったけど。
何を言えばいいのかわからなくて、ただ七瀬くんの顔を見て頬を染める…

「もうやめていいですか?」

「…え?」

七瀬くんが目を伏せた、斜め下をみるように私から視線を外して。

これはどうゆう意味?


曇った表情は七瀬くんらしくなくて。

それはどんな顔ー…?



“お金もらえるならどんな依頼でも引き受けます”



ハッとした、思い出した。

そうだ、忘れてた。


これはお金の関係だ。

最初からずっとお金を払ってる。



お金で七瀬くんを買ってるんだ、私。



“これ以上のことも、何でもしますけど?”