私の婚約者は、嘘ばっかり〜クズだけど優しい彼〜

…七瀬くんはたぶん気付いてた。

私がどれだけ今日気合いを入れて来たのか。
でもそれはお姉ちゃんに嘘の婚約者だってバレないようにじゃなくて。

「どうぞ、かじってください」

お姉ちゃんに引けを取らないように。

負けないように、見劣りしないように、せめて見た目だけでもそうしたくて気を張っていた。

七瀬くんはそれに気付いていた。

差し出されたりんご飴を見て、大きな口を開けてかじる。バリッと飴が割れる音がした。

「…おいしい」

本当は私なの、体裁や世間体を気にしてるのは私なの。
少しでもちゃんとした人に映りたくて。

「屋台で買うりんご飴ってなんかいいですよね~!」

七瀬くんが笑う、無邪気に口を開けて笑う。それは子供みたいで、いつもの七瀬くんとは少し違って見えた。

でもそんな姿に、逸らしていた視線を向けたくなってしまった。

七瀬くんのことを見ていたくって、暗い夜の中では見にくくて目を凝らさないとよく見えないから。