私の婚約者は、嘘ばっかり〜クズだけど優しい彼〜

重圧感たっぷりの口調に、冷え冷えとするこの空間…
今回も、もちろん拒否権はないのはわかってる。

お座敷の部屋で背筋をまっすぐ伸ばし正座をした母はお茶の先生をしていることから常に着物に身を包み、それが必要以上に堅苦しさと圧力を感じて視線を向けられると何も言えなくなる。

これは昔から、子供の頃から、何度言いたいことを飲み込んできたかわからないほどに。

…だからこれも、飲み込むしかなくて。


32歳独身、彼氏なし。


もう何年彼氏がいないかも忘れるくらい、そんな私にこの話は逆を言えば大チャンスでもある。

わざわざ母親が持ってきてくれたお見合いなんて、しかも有名ガラスメーカーの御曹司様なんてこんなありがたい話はないものね。

仕方ない、ここは思い切ってお見合いを…


「!」


と思って写真を開いた。

この人が運命の人かもしれないってわずかな可能性にかけてみようかなんて思ったのに…

「……。」

おじさんじゃん。

え、おじさんじゃない?


ハゲて太ったおじさん(推定60代)じゃん…!!!


これは今まですべてを飲み込んできた私でもさすがに…っ

「お母さんっ」

「30過ぎた女が1人フラフラしてるなんて恥ずかしいんだから」

「…!」

「自分の置かれている状況を見て判断しなさいよ」

「…。」