好きになっちゃ、いけない。〜イケメン主は家政婦兼最強スパイちゃんを溺愛したい〜

 茜さまは初めて笑みを崩し、私を見つめた。
 私は茜さまの言葉、挙動を一瞬でも見逃すわけにはいかないと、茜さまを見つめ返した。
 たった数秒のことだったと思うけど、私にはその見つめ合いが何分、何十分にも感じる。
 きっとそらしたら『負け』だ。私は今、勝負をしているんだ。──そう思った。
『負け』たのは、茜さまだった。
 なぜかくすっとおかしそうに笑ってから、あっけなく口を開く。
「見張っておくためだよ。それだけ」
「見張って……?」
「柚希ちゃんが変なことをしてないか、見張っておくの。そのためには、近くにおいとかないといけないでしょ?」
 ……本当に、それだけ?
 確かに、それが本当の理由だったら納得する。けど、そんなことを正直に言ってしまっていいのか。私が警戒して、茜さまに隠れて何かをするようになるとは思わないのか。
 それに、茜さまの赤い瞳。なぜか、全部見透かされてしまっている気がした。
 私はふぅと息をついてから、髪を耳にかける。
「では、茜さまは警戒心がなさすぎです」
「警戒してるつもりだけど?」