男装幹部はお姫様にご執心

「…奈々、まだ走れる?」


「も…もちろ、ん…だよ…っ!……ケホッ」



走っている途中で喋ったせいか、奈々がゲホゲホと咳き込む。
苦しそうに歪む顔を見ていられなくて、私はある決意をして奈々の腕を取り、引き止める。





「……?どうしたの、藍ちゃん。」




不思議そうにする奈々にこれからすることへの少しの申し訳なさと、気恥ずかしさを感じながら腕に力を込める。




「ちょっと失礼する…よっと!」


「ひゃあっ、藍ちゃん!?」


目を大きく見開いて、少し頬を赤らめて。
驚いたように藍を見つめるのも当然である。

というのも、奈々を引き留めるなり藍は奈々の腕と足をすくうように持ち上げる…所謂お姫様抱っこをしていたのだ。




「ちょっとキツイかもだけど…このまま行くよ!」


「いやあの藍ちゃん!?恥ずかしいと言うかなんというかもう…歩けるから自分で!!」



可愛い顔を真っ赤にして自分の腕のなかでジタバタ暴れる奈々。

すれ違ったサラリーマン風のお兄さんが奈々よりさらに赤い顔でこちらを見てきた。
これが奈々のパンツが見えてしまったから…とかだったら絶対許さない。



…まあ、かくいう私も自分の腕のなかで諦めたように縮こまる奈々に束縛に似た独占欲を抱いているのだが。




大人しくなった奈々を運びやすくなったな、なんて。
どこかズレてる感想を抱きながら学校までの道のりを懸命に走った―――