らくがきの中の君を、彷徨って見付けてさよならと言って

部活が終わったら一緒に帰る。
どーせ家はお隣さん、帰るところほとんど同じで。

まだ明るい夕方6時を過ぎたところ、お腹空いたねなんて話して今日って宿題何があったっけ?って思い返して、そんな他愛もないことを喋りながら家に帰る。

千颯とは小学生の頃からこんな感じ、千颯がここに来てからずっと…

「おかえり」

「あーっ、千鶴ママ!ただいま~!」

「咲茉ちゃんおかえり、千颯も」

「ただいま」

千颯の家の前に来ると千鶴ママがちょうど買い物から帰って来たところに居合わせた。手にはエコバッグを持って、家の中に入るところだった。

「持つよ、母さん」

それにサッと手を伸ばして千鶴ママからエコバッグを持っていく。

すごいナチュラルだ、たぶんいつもしてるんだろうなぁって思わせるくらい自然だった。じゃあっと私に言うと、そのまま家の中に入って行った。

うん、すっごいナチュラル!

「咲茉ちゃん、いつもありがとうね」

「え?」

千颯が中に入って行くのを確認して千鶴ママが私の方を見たから。

「咲茉ちゃんのおかげ、千颯がこの町に馴染めたのも毎日楽しそうなのも」

千颯がここへ来たのは小学校3年生の頃、千鶴ママとここへやって来た。千颯のおばあちゃんが住んでるこの町に。

「内気な子だったから心配してたんだけど、咲茉ちゃんが声をかけてくれたから」

今もあの頃も絵を描くのが好きだった私は一緒に絵を描こうって誘ったの。絵を描くのに言葉はいらないし、喋らなくても一緒に遊べるよって…

いつも下を向いていた千颯が気になってたから。

「咲茉ちゃんのおかげね、ありがとうね」

知らない町に来た千颯も怖かったと思うんだ。

でも私は嬉しかったの、千颯が来てくれたこと。

今もずっと嬉しいよ。


だから顔を上げて、私と一緒にー…