らくがきの中の君を、彷徨って見付けてさよならと言って

「ねぇ千颯、どっか遊び行かない?」

「どこ行くんだよ、大して行くとこねぇだろ」

「ねー、何にもないんだよねー」

のどか過ぎて、よく言えば自然が多いってこと。

派手なものも目を引くようなものもなくて、穏やかで平凡な…せめてカラオケぐらいあったらよかったのにスナックじゃなくて。

だから私は絵ばっかり描いてるのかも。
いや、楽しいから描いてるんだけどそれはもちろんそうなんだけど…

ワクワクするようなものなんてないから、だけど…

「なんだよ」

ドキドキするものならある。
千颯と目を合わせたら、それだけで満たされちゃって。

「つーか描けたのか?全然描いてないじゃん」

「できたよ!完成したから!」

窓からタタッと移動して絵の前に立った。

コンテストに向けて毎日少しずつ描いた作品、ちょーっと書き直したりもしたけどやっと完成した。一生懸命向き合って描いたおかげでいい絵になったと思う、自分で言うのもあれだけど。

「今年こそは賞を取るんだ」

出来上がった絵を上から下に、下から上にじーっと見てコクンと頷いた。

そしたらきっとお母さんも認めてくれる。進むことができると思うんだ。

「千颯も描けた?」

「あぁ、あとちょっと」

「じゃあできたら見せてもらお!」

完成した絵をそのままにもう1枚画用紙を持ってきた。棚から余っていた画板を持って来て画用紙を挟んで、筆箱から鉛筆を取り出して手に持った。

「まだ描くのか?」

「うん、まだ部活中だし!」

今日は美術部の活動日だから私たち以外も参加してる、だけど絵なんて基本個人活動だからね各々好きなように自分のペースで描くのが部活動で。それ見て先生もうんうんって満足気だもん。