らくがきの中の君を、彷徨って見付けてさよならと言って

「あ…まだ出してない」

「どうするか決めたの?とりあえず短大でも大学でも出といた方がいいから、お父さんも言ってたし」

「……。」

お父さんはそれなりの大学を出て今はサラリーマンをしてる。お母さんは大学へは行かず高校を卒業して就職した。

そんな話を何度も聞かされた。
だから私にはとりあえず大学へ行ってほしいらしい。

それも普通の、いや普通ってわかんないけど。

「私…、美大に行きたいんだけど」

ぼんやりと思いながらも言えなかったことを初めてお母さんの前で言ってみた。ずっと思っていたけど勇気がなくて口にできなかったっていうか、でも今日なら今ならいえる気がして。

「美大?美大なんか行って何するの?」

だけどね、これは普通じゃないらしいんだ。専門学校はダメって言われるかなって美大って言ったのに。

「絵の勉強がしたいの、もっと勉強してもっと描いてそれでっ」

「それからどうするの?」

「え?」

お母さんがはぁっと息を吐いた。食べようとしたシチューも口に入れないでそのまま手をおろして。

「絵の世界なんて成功するのはほんの一握りなんだからやめときなさい」

だからずっと言えなかったのに。やっぱり言わせてもらえないんだ。

いつもそう、私の思いは聞いてもらえないまま…

「普通の大学にしなさい」

だから普通ってなに?
絵を学びたいのは普通じゃないの?

私の夢は普通じゃないんだ…

私の夢は叶える努力さえさせてもらえない、ただ頭ごなしにダメって言われるだけで。


私の未来はどう作っていけばいいの?

わからないよ。