らくがきの中の君を、彷徨って見付けてさよならと言って

ぽろぽろ涙を流した。俯いて漏れる声を飲み込んで。

「咲茉…」

「私もう描けないの、描くの楽しくないの…苦しくてつらい全然楽しくない!」

あの日の無我夢中だった日々はもう帰ってこない。
たぶんもう出会えない、ときめきに囲まれてた毎日には。


だからつらくって、こんな私ダメだよ。

千颯の隣にいられない。


「ごめんね…、約束守れなくて」


一緒にいたかったよ。

一緒に絵を描きたかったよ。

一緒に夢を叶えたかったよ。


だけどもう無理なの。


私には叶えられそうにないの。



今は少しだけ、千颯の隣にいるのが怖い。

こんな私、どうしたらいいかわからなくて怖いの。



あんなに居心地がよかった千颯の隣が今はー…っ



「!」


体が熱くなった。

ぎゅって体中に千颯の体温を感じたから。


「咲茉のことが好きだ、ずっと好きだった」


千颯の腕の中に閉じ込められて、耳元で千颯の吐息を感じる。

「別に絵なんか描けなくてもなんだっていいんだよ、何が出来ても出来なくても咲茉なんだから」

男の子に抱きしめられたのなんか初めてだ。

ドキドキして胸が苦しい、でも愛しい。
苦しいのに愛しいってそんなことあるんだね。

「…でも千颯は絵を描くのが好きでしょ?」

ゆっくりゆっくり千颯の背中に手を回す、ドキドキしてちょっとだけ手が震えちゃった。

「あぁ、好き…だよ」

千颯が絵を描くことが好きなことは知ってる。

誰より知ってる、ずっと隣で見てきたから。

「それでいいんだよ」

私も好きだったよ、絵を描くことが大好きだった。

「ねぇ千颯、私も千颯のことが好き…大好きなの」

そんな絵よりも、私のことが好きって言ってくれるんだ。

「それだけで十分だから」


それってすごいことだね、嬉しくてたまらないよ。


「だから千颯いってらっしゃい」