らくがきの中の君を、彷徨って見付けてさよならと言って

居ても立っても居られなくて家に飛び込んだ。千颯の家に、千鶴ママが私の背中を押すみたいに“どうぞ”ってドアを開けてくれたから。

家の中に乗り込むみたいに玄関から飛び込んで千颯の部屋がある2階まで駆け上がった。

階段を上がるたびに込み上げる思いが胸を締め付ける、ぎゅっと抑え込まれたような感覚に胸が熱くなって。

きっと千颯の顔を見たらもう我慢ができない。

「千颯…っ」

瞳からこぼれ落ちる涙がポタッと床に落ちた。

「咲茉!?なんだよっ、ちょ…まだ支度してっ」

勢いよくドアを開けたら制服のブレザーを羽織った千颯が焦ったようにボタンを留めていた。この部屋もよく遊びに来てた。


何度もここで一緒に絵を描いたよね。


2人で1枚の画用紙に絵を描いたこともあったし、見たことない色を探そうって絵の具を混ぜたり…あ、絵の具をこぼして千鶴ママに怒られたこともあったね。


そんな毎日だった。

楽しかったよね。


全部私の大好きな瞬間だった。



今もずっと大好きなの。



「千颯行かないで…っ!」



声が震える、涙で滲んでうまく千颯の顔が見られない。

「留学なんか行かないでっ、ずっとここにいて私のそばにいて!」

次から次へとこぼれてくる涙を拭って、振り絞るみたいに声を出して。


ねぇ千颯、本当は嬉しかった。

行かないって聞いた時嬉しかったの。


だって私…



「千颯のことが好きだよ」



ずーっとずーっと千颯のことでいっぱいだった。