「咲茉っ!」

あれから数ヶ月、私の夢は粉々になった。

「千颯…」

ぼぉーっと立ち尽くす私のもとへ千颯が駆け寄って来た。

「咲茉…」

「…。」

ずっとがんばってきたコンテストの結果が出た。

毎日祈るように夢見て、思いをめぐらせては願っていた。

認められたくて、進みたくて、必死になって描いた絵の答えが…



出た。



「あのっ」

「千颯、すごいね!」

部活の一環としてコンテストに出した絵は学校に飾られる。

もれなく全員飾られてその下に名前が貼られる、受賞した賞と一緒に。


「今年も賞取ってるじゃん」



井上千颯(いのうえちはや)、最優秀賞。


1番優れた人に贈られる賞が千颯の名前の隣に書いてあった。



「咲茉っ」

「しかも1番すごい賞!すごいね!」

「咲茉…っ」

ピカピカ輝く文字で書かれたその名前が、まぶしくて。

「千颯はすごいよ…」

目がくらみそうだった。

何も見えなくなるかと思った。

カラフルに描いたつもりだったこの絵も、くすんで見えて。


私の名前の隣には何も書いていない。
私は、今年も落選だ。


「ごめん、今日は部活休む!先生にテキトーに言っといてくれない?」

「咲茉…っ!」


あぁ今年もダメだった。
今年も私はダメだった。

胸が苦しい、潰れそうで苦しい。


楽しくて描いてるはずだった。

好きで描いてるつもりだった。


それなのにどうして?


わからないの、私ってどうして絵を描きたいんだっけ?

どうして描いてるんだっけ?


わからなくなっちゃった。