鬼課長は、ひみつの婚約者



「……だから、莉子ちゃんに意地悪して、自分のほうが優れているって、証明したかったの」


その言葉に、私の心は締めつけられるように痛んだ。


「でも、莉子ちゃんは、あたしが卑怯な真似をしても、望月課長は堂々と莉子ちゃんを連れて行った。その姿を見て、あたしは自分がすごくみじめで、恥ずかしくなって……。本当にごめん」


もしかしたら真由も、私と同じように辛かったのだろうか。


いや、彼女のプライドを傷つけてしまったのは、紛れもなく私だ。


「もういいんだよ。私も真由の気持ち、少しは分かるから」


私がそう言うと、真由は安堵したような、寂しそうな、複雑な表情をしていた。


「ありがとう、莉子ちゃん……」


真由の肩をぽんと叩くと、私は優しく微笑んだ。


給湯室を出ると、私は真っ直ぐ瑛斗のデスクへと向かう。


「おはようございます、望月課長」


私が声をかけると、周りの同僚たちが一斉にこちらを向いたのが分かった。


けれど、私はもう顔を伏せたりはしない。


すうっと深呼吸すると、私は思いきって口を開いた。