鬼課長は、ひみつの婚約者



「昼食だ。早く」


瑛斗のいつものクールな声に、私は戸惑いながらも立ち上がる。


これまで会社では、業務外でこうして声をかけてくることなんてなかったのに……。


私は彼に導かれるように、その隣を歩く。周囲の視線が、痛いほど突き刺さる。


「……望月課長、少し離れて歩いてもらえませんか」


私は瑛斗のスーツの袖を引っ張り、小さな声でそうお願いした。


瑛斗は私の言葉を遮るように、私の手を優しく握りしめた。


「周りの目を気にして、君と距離を取る必要はないだろう。それに、俺が君と一緒にいたいんだ」


瑛斗はそう言うと、私の手を優しく握りしめた。


そんな嬉しいことを言われたら、断れないじゃない。


私は、瑛斗と繋いでいる手に、きゅっと力を込めた。