「千堂さん、帰るよ」
瑛斗に抱えられながらタクシーに乗り込むと、彼は私を優しく引き寄せ、逞しい腕の中に包み込んでくれた。
タクシーのシートから、瑛斗の体に優しく押しつけられる。彼の温もりと、慣れ親しんだ匂いが、私の心を安堵で満たしていく。
ああ、ほっとする……。
「莉子、疲れただろ」
瑛斗の優しい声に、私はこくりと首を縦に振る。
車の心地よい揺れと、愛しい彼の腕の中で、私は深い眠りに落ちていった。
***
次に目が覚めると、見慣れた天井が目に入った。西日がカーテンの隙間から差し込み、部屋の中を柔らかなオレンジ色に染めている。
瑛斗、どこだろう。
私はベッドから起きると、ぼんやりとした頭で瑛斗を探した。
彼は、リビングのソファに座って本を読んでいた。
瑛斗の横顔は穏やかで、部屋に満ちる温かい空気が、彼の優しさを物語っているようだった。
「瑛斗……」
私が声をかけると、彼はすぐに顔を上げてくれた。
「莉子、おはよう。気分は、どうだ?」
私は頷き、そして、昨夜の出来事を思い出す。その途端、私は胸がいっぱいになった。
「……瑛斗、昨日は……」
「大丈夫だ」
瑛斗は、私が話す前に、すべてを察してくれたかのように微笑んだ。
そして、私のおでこに優しくキスを落とす。その唇の感触は、いつもよりずっと優しいものだった。
「本当は、もっと早く君を公にしたかった。でも、怖かったんだ」
瑛斗の声は、ほんの少し震えている。



