鬼課長は、ひみつの婚約者



「ねえ、聞いた? 莉子ちゃん、企画書で致命的なミスをしたんだって」

「まじ? あの真面目な千堂さんが?」

「うん。なんか課長にめちゃくちゃ怒られてたよ。あんな重大なミスするなんて、やっぱり経験不足だよね」

「……っ!」


同僚たちのひそひそ話に、私の胸はぐっと締めつけられる。


そして、真由の視線が私を捉え、意地悪く口角を上げた。


「ムカつく……」


私自身が仕出かしたこととはいえ、自分を嘲笑されている。


そのことが、私の心に新たな怒りを灯した。


ここで挫けてたまるか。ここで諦めたら、私はただの『ミスをしたダメな社員』で終わってしまう。


瑛斗に認めてもらうため、そして自分自身に胸を張るために、私はこの試練を乗り越えなければならない。


……ちゃんとやらなきゃ。


私は唇を噛み締め、両の拳を強く握りしめた。