鬼課長は、ひみつの婚約者



それは、私が見たことのない資料だった。


「課長、お疲れ様です。次期プロジェクトの提案書です。この間お話した続きで、少しでも課長のお役に立てればと思って、頑張って作ってきたんです!」


真由の熱心なアピールに、瑛斗は眉ひとつ動かさずにそれを手に取った。


私は、真由が瑛斗に対して抱いている特別な感情を悟り、息が詰まるような焦燥感に襲われた。


彼女は、チラリと私を見て、不敵な笑みを浮かべた。その表情には、私への対抗心がはっきりと見て取れた。


「あ、千堂さんも資料ですか? 頑張ってくださいね」


真由のまなざしに私は何も言えず、その場に立ち尽くしていた。


その日の夕方。デスクでパソコンに向かっていると、スマートフォンが震えた。


瑛斗からのメッセージだ。