鬼課長は、ひみつの婚約者



マンションの部屋に着くと、瑛斗は自分のことより先に私の髪を優しくタオルで拭いてくれた。


「まったく、君ってヤツは。いつもこうやって俺を心配させる」


呆れたように言いながらも、その手つきは驚くほど優しかった。


「瑛斗。これくらい、自分でできるよ?」

「会社で冷たくしている分、家では莉子を甘やかせてやりたいんだ」


彼は、私の濡れた髪をタオルで拭きながら、切なげな瞳でそう訴えた。


会社での冷たい瑛斗からは想像もつかないほど、愛おしさがこもった瞳だった。


その瞳に、私の心にあった『本当にこの人で良かったのかな?』という不安が、溶けて消えていくのを感じた。


「瑛斗、ありがとう」


私は、彼の胸に顔を埋め、温かい腕の中に包まれた。


翌日。私は、昨日やり直しを命じられた資料を提出するため、瑛斗のデスクへ向かった。


すると、私の後ろを歩いていた真由が、私と瑛斗の間に割り込むようにして、彼のデスクに何かを差し出した。