【滝沢のアジト】

滝沢と璃夏は
テレビで、橘の緊急記者会見を
ただ、黙って見ていた
画面の中で
一つの巨大な帝国が、崩壊していく
その光景を
二人は、静かに見届けていた
やがて、会見が終わり
スタジオに画面が切り替わる
コメンテーターたちが
鬼の首でも取ったかのように
好き放題、桐生院親子を糾弾し始めた
璃夏:「……終わりましたね」
滝沢:「そうだな」
璃夏:「でも、響さん……いえ、明日香さんは」
璃夏:「これからが、本当の戦いですね」
滝沢:「……ああ」


【数日後】

明日香の、新しい戦いは
すでに始まっていた
警視庁・取調室
石松:「……本当に、申し訳なかった」
石松は
明日香の前で
深く、深く、頭を下げた
明日香は、静かに頷く
明日香:「あなたを、責めてはいません」
明日香:「あなたは、あなたの正義を貫こうとしてくれた」
明日香:「……それだけで、十分ですわ」
彼女は
桐生院琉星が行ってきた、全ての罪と
その証拠を
正確に、そして、冷静に
刑事たちに、語り続けた

弁護士事務所

テーブルの上には
膨大な量の、資料が広げられている
明日香は
辣腕で知られる弁護士たちを前に
一歩も引くことなく、議論を交わしていた
その姿は
もう、赤坂の夜の蝶ではない
自らの知性を武器に戦う
一人の、屈強な戦士だった

記者会見

そして
彼女は、再び、世間の前に姿を現した
TikTokの、薄暗い画面の中ではない
テレビカメラの、無数のフラッシュが焚かれる
記者会見の、その壇上に
一人の記者が、質問する
「桐生院彩音を、許せますか?」と
明日香は
その問いに、静かに、そして、きっぱりと答えた
明日香:「許す、許さないでは、ありません」
明日香:「ただ、犯した罪は、法の下で、正しく裁かれなければならない」
明日香:「……私は、その事実を、世間に問うただけです」
その、凛とした姿
その、決して揺るがない瞳
その場にいた誰もが
確信した
この女帝の戦いは
まだ、始まったばかりなのだと
そして
その戦いを、最後まで見届けることこそが
自分たち、メディアの
本当の「正義」なのだと