【深夜・首都高速】
覆面パトカーが
サイレンを咆哮させながら
首都高速の出口へと滑り込む
運転しているのは石松
その目は血走っていた
石松:(もう少しだ……!)
石松:(待ってろよ、ファントム…!)
【麻布警察署・正面玄関】
滝沢は
桐生院琉星の体を
黒い高級車の後部座席へと
乱暴に押し込んだ
そして自らも乗り込む
けたたましいサイレンの音が
すぐそこまで近づいてきている
だが
まだ、誰にも気づかれてはいない
運転席の璃夏が
静かに、アクセルを踏もうとした
その、瞬間
一台の覆面パトカーが
猛烈な勢いで、署の敷地内へと飛び込んできた
璃夏は、咄嗟にブレーキを踏む
覆面パトカーは
璃夏たちの車の、ほんの数メートル横を
猛スピードで通り過ぎ、急停車した
中から、石松が飛び出してくる
彼は、今すれ違った黒い高級車を
一瞬だけ、訝しげに見た
だが、すぐに視線を外し
麻布署の中へと、駆け込んでいった
璃夏は、息を殺し
ゆっくりと、車を発進させた
【麻布警察署・署内】
石松は
廊下を歩いていた警察官を
無理やり掴んだ
石松:「桐生院琉星は、どこだ!」
警官:「え、あ……」
警官:「今、窪田さんが、本庁がもう一度取り調べしたいからって、連れて行きましたよ」
警官:「なんでも、入り口まで連れて来いって、命令らしくて」
石松:「……なんだと!」
石松の絶叫が、署内に響いた
別の警官が、慌てて付け加える
別の警官:「さっき、正式な移送命令も、データで回ってましたよ?」
石松は、近くのデスクのパソコンを
勝手に操作し、データを確認する
そこには、本物と見分けがつかない
完璧な移送命令書が表示されていた
石松:(……そんなわけ、ねぇだろうが!)
彼はスマートフォンを取り出すと
警視庁本部に残っていた、自分の部下に電話をかけた
石松:「おい!そっちで、琉星の移送命令を出した奴はいるか!」
部下:『いえ、誰も……』
石松:(……どういうことだ?)
彼は、さっきの警官に、再び掴みかかった
石松:「窪田と琉星が出て行ったのは、いつだ!」
警官:「え、ええと……本当に、今さっきですよ」
今、さっき
石松の脳裏に
先ほどの光景が、フラッシュバックした
石松:(……あの、黒い高級車か!)
石松は、ダッシュで、署の外へ戻る
そして、自分が乗ってきた覆面パトカーに
飛び乗った
石松:(……あっちに行ったな、確か)
覆面パトカーは
再び、サイレンを咆哮させた
そして
滝沢たちが消えていった、夜の闇へと
猛追を、開始した



