第五章:再会
【斉藤未香のマンション】
明日香の額に
サプレッサーが付いた冷たい銃口が
深く突きつけられていた
彼女はショックで声も出せない
目の前の男
その影になった顔
だが、その、あまりにも特徴的な
巨大な銃のシルエット
そして、その圧倒的なオーラ
明日香の、脳裏の奥深くに眠っていた
5年前の記憶が、蘇る
明日香:(まさか……)
滝沢の指が
ゆっくりと、引き金にかけられる
その、瞬間
彼の目が
目の前の女の顔を
はっきりと、捉えた
その、決して忘れるはずのない
美しい顔を
滝沢の目が
驚愕に、見開かれた
パスッ
乾いた発射音
銃弾は、明日香の顔の数センチ横を通り過ぎ
背後の壁に、小さな穴を空けた
明日香は
その場に、腰が抜けてへたり込む
そこを
滝沢が、力強い腕で、支えながら叫んだ
滝沢:「響(ひびき)!?」
明日香:「た、滝沢……さん?」
滝沢:(なぜ、響が、ここにいる……!?)
だが、思考する時間はない
璃夏が言っていた、5分というタイムリミットが
彼の頭の中に警鐘を鳴らす
滝沢:「響!行くぞ!」
明日香:「え?」
滝沢:「大事な物があるならすぐ取りに行け!」
滝沢:「あと2分で、ここを出る!」
明日香:「あ、はい!」
明日香は、妹の遺留品が入ったビニール袋を
バッグの中に叩き込むと
滝沢に腕を引かれ、部屋を飛び出した
そして、マンションの下で待機していた
璃夏が運転するセダンに、転がり込む
璃夏:「え?」
滝沢:「話は後だ!とりあえず帰るぞ!」
璃夏:「は、はい!」
車が、急発進する
ルームミラーで、後部座席の女の顔を見た璃夏は
信じられないといった表情で、目を見開いた
璃夏:「……響さん?東条響さん、ですか?」
明日香:「……その声……リカさん?」
璃夏:「どうして、響さんが、ここに!?」
滝沢:「俺にも分からん」
滝沢:「……ターゲットが、響だった」
璃夏:「えぇ!?」
明日香:「依頼人は、きっと……桐生院彩音、ですよね?」
滝沢:「顔は隠してたから分からん」
璃夏:「桐生院彩音って、あの国民的歌手の?」
明日香:「そうよ…」
滝沢:「……なんだ?あの時のバカ息子と同じ名字だな」
明日香:「……親子、ですから」
滝沢:「……あの時の事と、関係があるのか?」
明日-香:「はい。もしかしたら、あるのかもしれません…」
明日香:「……ただ、今回は」
彼女は、声を、絞り出した
明日香:「桐生院琉星に、私の妹を、殺されました」
その、あまりに衝撃的な告白に
滝沢と璃夏は
ただ、言葉を失った



