【警視庁・周辺】
石松は
怒りのままに警視庁を飛び出した
彼の後ろを
数人の若い刑事が
覚悟を決めた顔でついてくる
石松は立ち止まらない
近くのラーメン屋の暖簾を
乱暴にくぐった
店主の頑固親父が
石松の顔を見て、ニヤリと笑う
店主:「よう、石松」
店主:「また、でかいヤマか?」
石松:「あぁ。とびきりデカいやつだ」
石松:「奥の座敷、借りるぞ」
店主は、何も言わずに頷いた
【ラーメン屋・座敷】
座敷のテーブルは
あっという間に、捜査本部になった
刑事たちが持ち寄った資料と
ノートパソコンが、所狭しと広げられる
石松は、まず一人の部下に命じた
石松:「科捜研の田中に、すぐに連絡しろ」
石松:「『桐生院の現場で押収したブツ、俺の責任で、絶対に確保しとけ』とな」
石松:「課長にも、誰にも、渡すなと伝えろ」
部下:「は、はい!」
石松:「それから、あのTikTokライブだ」
石松:「アーカイブを全員で、一言一句、違わずに分析しろ」
石松:「斉藤明日香……あのお姉さんが言っていたことは、全てが手掛かりになる」
刑事の一人が、声を上げた
刑事:「5年前にも、被害に遭っていたと言っていました!」
石松:「そうだ。その時の記録を、今すぐ洗い出せ」
石松:「どんな些細な情報でもいい。全て拾え!」
刑事たちが、一斉に動き出す
ラーメン屋の座敷は
正義を取り戻そうとする男たちの
異様な熱気に、満ちていた
そして
石松は、最後の、そして最も重要な指示を出した
石松:「……斉藤明日香本人を探し出すぞ」
石松は
部下が再生した、ライブ映像のアーカイブ
その画面に映る、明日香の、覚悟を決めた瞳を
じっと、見つめていた
石松:「彼女が、俺たちの、最後の切り札だ」
石松:「桐生院彩音の連中より先に、必ず、見つけ出す」
その声は
静かだったが
彼の、警察官としての、いや
一人の人間としての、全てを賭けた覚悟が
確かに、宿っていた



