【改稿版】溺愛彼氏  失恋したらチャラ男が一途な本性を現しました

 話しているうち辺りはすっかり暗くなり、頼りない電灯と欠けた月がわたし等を照らす。握られ続けた手首の感覚が無くなりそう。

 片桐の告白は驚きに次いで申し訳無さを巡らせた。つまり彼の気持ちに応えられない、これが結論。

「……今日のところはマンゴープリンはお預けという事で帰るぞ、解散!」

 わたしからは離せないと察知したんだろう。片桐は手を離すタイミングを演出する。戻された腕が力なく揺れ、心も揺れる。残酷な答えを出してしまい、顔を上げられなかった。
 
「ミユ」

 呼び掛けに怒気は含まれていない、と思う。

「振られたからって友達辞めたりしねぇから安心しろよ。明日になれば今まで通りだ」

「友達でいてくれるの? いいの?」

 望む言葉にパアッと視界がひらけ、食い気味に聞いてしまう。片桐はゆっくり頷く。

「当たり前だろ。ミユも変に気を回したりしないでくれよ? 俺、今の関係が壊れるのは嫌なんだ」

「うん、わたしも嫌だよ。片桐と友達でいられなくなるのは嫌」

「……分かった。暗いから気を付けて帰るんだぞ」

 いつもなら家まで送ってくれるが、さすがに今日はそうもいかないだろう。

「うん、ありがとう。片桐も気を付けて」

「おぉ! じゃあな」

 片桐はニコッと笑う。満面の笑みなのに欠けているような笑顔。
 何度か振り返り、その度手を振ってくれる彼を見送り、わたしは生まれて初めて月の裏側を見た気がした。