第十二章 選んだ未来
夜風に髪が揺れる。
月明かりの下で、美鈴は二人を見つめ、深く息を吸った。
「わたしは――」
声は震えていた。けれど、その瞳には迷いが消えていた。
「……蓮さまを選びます」
一瞬、空気が止まる。
悠真の目が見開かれ、そしてすぐに苦しげに細められた。
蓮の瞳もまた揺れたが、その奥には確かな光が宿った。
「どうして……?」
悠真が絞り出すように問いかける。
美鈴は涙を拭い、言葉を続けた。
「悠真くんの優しさは、何度もわたしを救ってくれました。
子供の頃からずっと、あなたがいてくれたことに感謝しています。……でも」
胸に手を当てる。
そこに刻まれた鼓動は、彼の名を呼んでいた。
「蓮さまの冷たさの奥に、本当の想いがあると知った時……わたしの心は動いてしまったのです。
不器用でも、遠回りでも、わたしを守ろうとしてくれた。
その強さに……惹かれました」
悠真はしばらく黙っていた。
やがて、苦笑を浮かべながらも、優しく頷いた。
「……そうか。やっぱり君は、昔からそういう子だよな。
俺の想いは消えない。でも……君が幸せなら、それでいい」
その言葉に、美鈴の胸は締めつけられる。
けれど悠真の笑みは、最後まで彼らしく優しかった。
蓮は静かに一歩踏み出し、美鈴の手を取った。
冷たいと思っていたその手は、今は驚くほど熱を帯びていた。
「……おまえは俺のものだ。もう二度と離さない」
強い言葉に、美鈴の頬が赤く染まる。
その瞳に射抜かれながら、彼女もまた小さく頷いた。
「はい……蓮さま」
夜空に広がる月光が、二人を照らす。
幼馴染の優しさに背を押され、冷たい許婚の不器用な愛を受け入れた美鈴。
彼女の物語は、ついに新たな一歩を踏み出したのだった。

