許されざる婚約と学園の秘密


第十一章 決断の夜

夜の校舎屋上。
学園祭の後片付けが終わり、静かな風が吹き抜ける。
美鈴は、胸の奥に溜まった思いを整理するため、一人でそこにいた。

――蓮さまの冷たさの裏に隠されていた、不器用な愛。
――悠真くんの真っ直ぐで温かな告白。

どちらも嘘ではない。
どちらも美鈴を想ってくれている。
だからこそ、答えを出すのが苦しかった。

「……美鈴」

背後から呼ぶ声に振り返ると、悠真がいた。
月明かりに照らされた横顔は、切実な想いをにじませている。

「俺は、もう待てない。答えを聞かせてほしい」
「悠真くん……」

近づいてくる彼の瞳は真っ直ぐで、逃げ場を与えてくれない。
言葉を探そうとしたその瞬間――

「おまえが焦らせるな」

冷たい声が風を切った。
蓮が現れ、悠真と美鈴の間に立つ。

「蓮さま……!」

二人の御曹司が、また向かい合う。
悠真は一歩も引かず、低く告げた。

「俺は諦めない。政略婚約なんて関係ない。俺が欲しいのは、美鈴の気持ちだ」

「……同じだ」
蓮の声は鋭くも揺るぎない。
「だが俺は、美鈴を手放すつもりはない。誰にも渡さない」

二人の想いがぶつかり、空気が張り詰める。
美鈴は震える声で二人を見つめた。

「やめて……お願い、もうやめて……!」

涙が頬を伝う。
二人の真剣な瞳は、彼女に答えを求めている。

逃げられない――。
今こそ、自分の気持ちをはっきりさせる時だ。

美鈴は震える手を胸に当て、大きく息を吸った。
そしてゆっくりと口を開いた。

「わたしは――」