胸が高鳴る。
風が一瞬止んだように、世界が静まり返った。
「俺は君が好きだ。子供の頃から、ずっと変わらない」
「……っ」
心臓が大きく跳ね、言葉が出ない。
悠真は続ける。
「君が笑うと嬉しくて、君が泣くと胸が痛い。
どんな噂が流れても、俺は絶対に君の味方でいる」
その声は温かく、そして力強い。
蓮の冷たさの裏に隠された熱とは違う、包み込むような真摯さがあった。
「許婚なんて関係ない。俺は“美鈴”という人を愛してる」
頬が熱くなり、涙が滲む。
美鈴は唇を震わせながら、やっと声を絞り出した。
「……悠真くん……わたし……」
返事を告げようとしたその瞬間。
「――随分と熱心だな」
低く鋭い声が、屋上の扉の方から響いた。
振り向くと、そこには蓮が立っていた。
風に揺れる制服の裾、冷ややかな瞳。だがその奥には、確かな嫉妬の色が燃えていた。
夕暮れの屋上に漂う緊張。
ついに三人の想いが真正面からぶつかろうとしていた。

