私、もしかしてかなりピンチかも~…!?

 背中がじわりと しめっているのは、暑さのせいか、怖気(おぞけ)のせいか。

 一歩一歩近づいてくるイタリア人さんを見て、このまま死んじゃうのかな、と一気に感情が波打った。




《心配はいらない。苦しむのは…ほんの一瞬だ》


「んーっ!んんーっ!」




 円を描くように、ナイフの切っ先を小さく回したイタリア人さんは、私の目の前で足を止めて、ニヤリとした笑顔をグッと近づけてくる。

 それから、ナイフを持った左手をうしろに引いた。


 アイスも冷やし中華も食べられないまま、お腹をすかせて死ぬなんていやだ~…っ!

 目に浮かんだ涙ごと、ギュッとまぶたを閉じた次の瞬間。