ショートパンツのポケットに入れていたスマホがまた振動(しんどう)する。

 これで3回目。

 たぶん、お母さんだろうなぁ…いつまで経ってもアイスを買ってこないから、怒ってる?


 それとも、お昼ごはんできたよーってお知らせかな。

 今日のお昼、冷やし中華だったらうれしいな~。

 そんなことを考えていたら、ギィィ、と廃工場の大きな扉が開いて、イタリア人さんがもどってきた。


 窓から日差しが入ってきているけど、扉が開くと いっそう目の前が明るくなる。

 まぶしさにすこし目を細めると、イタリア人さんの左手にキラリと光るものが見えた。




《待たせたな、暑かっただろう?安心しろ…すぐ、永遠の眠りにつける》




 コツコツと足音をひびかせながら、イタリア人さんは左手のナイフをヒラヒラと持ち上げ、肩をすくめる。




「んんっ…!」